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SDMAを測定して早期に慢性腎臓病を発見しよう
18年08月19日
慢性腎臓病(CKD)は人では糸球体ろ過率(GFR)の持続的な低下、持続的なたんぱく尿を伴う腎障害と定義されており、CKDのステージ(病期)の判定はGFRつまり腎臓の仕事量をもとに判定されています。本来は犬や猫でもGFRの測定を行いたいところですが、実際に行うためには高価で煩雑であるためGFRを測ることはなかなか難しいのが現状です。そのため腎臓機能のスクリーニング検査として血液尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cre)という検査項目が指標として用いられてきました。
BUNは腎機能以外の要因に左右されることが多く、クレアチニンは筋肉の代謝産物であり、筋肉の少ないやせた動物では数値が上がりにくく過小評価してしまったり、CKDでは腎機能の75%が失われないと明確に上昇してこないという問題点がありました。
「SDMA」は対称性ジメチルアルギニンという物質で、たんぱく質の代謝産物でほとんどが尿中に排泄されるため、GFRとよく相関することが分かっています。SDMAは筋肉量に影響を受けず、腎機能(GFR)が40%失われた段階で上昇するので(クレアチニンだと腎機能の75%が失われてから上昇する)、早期に慢性腎臓病を検出可能と言われています。
CKDの猫ではSDMAがクレアチニンより平均17カ月早く上昇し、犬においても平均9.5カ月早く上昇することが報告されています。
今までのCKDのステージ分類ではクレアチニンの上昇にもとづいておこなわれていましたが、クレアチニンの上昇で診断できるのはステージ2以降であり、早期のステージ1を診断することは生検以外には現実的には不可能とされていました。それがSDMAの測定が可能になり、多数の症例報告と検討により、症状のほとんど出ていない初期のCKDの診断が可能になりました。
これにより、腎臓病の増悪因子を発見し、腎臓病の進行により早期から注意することができるようになりました。さらに腎臓療法食を用いた食事療法は一般にステージ2から適応とされていますが、ステージ1と早期発見できた症例については定期的な検診を行えば、ステージ2に入るのと同時に食事療法が開始でき、現状で望める最大限の延命も理論的には可能なものとなってきます。
当院でも、慢性腎臓病の治療中や疑いのある動物、腎臓病がご心配な方にはペットの健康診断項目に追加して検査を行っています。外注検査ですので、後日2~3日で報告となります。
腎臓病がご心配な方、健康診断の一環としてぜひ一度ご検討ください。
補足にはなりますが慢性腎不全は尿検査で判断できる項目もあり尿検査もお勧めいたします。