南が丘動物通信トップ
最近のブログ
最近のエントリー
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
縫合糸肉芽腫
13年02月05日
縫合糸肉芽腫は、外科手術の際に用いた縫合糸に対して生体が異物反応を起こして形成されます。原因として、縫合糸の材質や縫合糸による化学刺激、術後の二次感染が挙げられていますが、詳細な原因や病態は未だ不明です。
外科手術に用いられる様々な縫合糸の中で最も肉芽腫を引き起こしやすいとされているのが絹糸です。絹糸はその素材が動物性タンパク質から成ることや、マルチフィラメント(編み糸)であることから異物反応を起こしやすいと言われています。ただし、すべての種類の縫合糸において縫合糸肉芽腫の形成が報告されており、必ずしも絹糸だけが肉芽腫の原因となるわけではないようです。
好発犬種としてミニチュア・ダックスフントが挙げられており、遺伝的要因の関与も疑われています。
臨床症状として皮膚や皮下織に紅斑や隆起、結節、びらん、潰瘍が認められ、漿液や膿が出てくることもあります。したがって皮膚疾患や腫瘍性疾患との鑑別が必要で、手術歴や犬種なども頭において診断していくことが大切です。治療は主に外科的切除です。抗生物質による化膿のコントロールや免疫抑制剤が使用される場合もあります。ただ、切除によって完治するとは限らず、再発したり皮下織炎や脂肪織炎を発症する例もあるため注意が必要です。
現在、超音波メスや電気メス、シーリングシステムなど縫合糸を使う場面を減らせるような設備が発達してきてはいるものの、糸を全く使用せずに手術を行うことは困難です。そのため、できるだけ縫合糸肉芽腫の発生を防ぐためには上記のような設備を用いたり、反応を起こしにくい糸を選択するなどの対策が必要です。