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縫合糸肉芽腫とエンシールシステム
10年10月19日
獣医科領域にて近年問題となっているものの一つに「縫合糸肉芽腫」という病気があります。縫合糸肉芽腫(縫合糸反応性肉芽腫)とは、手術の際に使用された縫合糸に対する過度の組織反応が原因で肉芽腫という腫瘤が形成され、様々な問題を引き起こす病気の事です。その様な状態になると何度となく手術が必要となり、免疫抑制剤などのお薬の投与が一生涯にわたって必要になることもあります。M・ダックスフンドで有名な病気ですが、チワワ・シーズー・マルチーズ・トイプードルなどでも発生リスクが高いと言われています。
従来、外科手術を行う時に血管を結札したり、組織をくっつけるためには縫合糸が使用されます。縫合糸肉芽腫を起こしやすい糸としては外科用の非吸収糸(吸収されず体内に残る糸)である絹糸などがあげられます。当院ではこの病気の発生リスクが低い合成吸収糸(とけて吸収される糸)を用いて手術を行っていますが、どのような素材の縫合糸を利用したとしても生体にとっては「異物」という事になりますので、組織反応が起きることになります。
そこで当院では避妊手術や脾臓摘出手術などの際に「エンシールシステム」の使用を推奨しています。 「エンシールシステム」とは縫合糸を使うことなく血管をシーリング・切断できる機械で約7mmまでの血管を処理できます。 このシステムを使用する事で血管を結札する必要がなくなり、体内に残る縫合糸を最小限にし、縫合糸肉芽腫の発生リスクを抑える事ができます。また、手術時間の大幅な短縮が可能となり、動物に対する負担も大幅に軽減する事が出来るので、縫合糸肉芽腫の発生リスクの高い犬種の飼い主さんのみならず皆さんにおすすめしています。