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最近のエントリー

10 /27 葉月会Webセミナー 歯科シリーズ第5回 正しい抜歯の方法

20年10月27日

講師 戸田 功 先生
とだ動物病院 院長


今回は、葉月会WEBセミナーの臨床歯科学シリーズ第5回目の講義でした。内容は「抜歯」についてでした。抜歯の適応症例、抜歯をする際のコツ、抜歯後の処置の方法を画像や動画を使って分かりやすく解説してくださいました。
歯周病は歯が汚れていく疾患というイメージがあると思われがちですが、そうではなく顎が腐敗していく病気です。歯周病は進行すると、炎症が顎骨まで波及し骨折してしまうこともあります。そうならないように、普段から予防としてデンタルホームケアやスケーリングなどの予防は大切になりますが、予防していても進行してしまった歯周病の歯に対しては抜歯をする必要があります。このように歯周病による歯周ポケットの炎症が広がってしまったものの他にも不正咬合や位置の異常な歯、歯根の破折がおこってしまった歯など歯周病以外でも抜歯の適応があります。抜歯はご家族の皆様にとって気が進まない治療のうちの一つであると思います。しかし、抜歯はこのような症例には必要な処置ですので、ご家族の皆様が安心して、かつ納得できるような説明をするのに今回の講義内容を活かしていこうと思いました
また抜歯後の処置については露出した歯槽骨を覆う為に、歯肉を剥がして行う「フラップ」の仕方を動画を参照しながら解説してくださいました。さらに実際に講師の先生が使用されている歯科用手術器具とそれらの長所及び短所も併せて紹介してくださったので、手術のイメージがしやすく、今後歯科処置が必要な子たちの処置の際の参考にしていきたいと感じました。

R.I

門脈体循環シャントの手術

20年10月26日

2歳雑種の女の子のワンちゃんで、とくに典型的な症状はなにもなく、避妊手術のための血液検査にて異状が認められご紹介いただいた症例でした。造影CTで、左胃大網静脈を介した門脈ー奇静脈シャントが証明されました。開腹手術中の仮遮断前の門脈造影検査にて門脈枝が確認されGradeⅠに分類されました。幸いなことに完全結紮にて門脈圧も上がらずに手術は終了できました。術後痙攣もなく術後の肝機能検査もすべて良好になりました。CT撮影により確定診断が術前につくようになり、結紮前の門脈造影にてGrade分けができ、門脈圧を計測しながら結紮を行い、術後痙攣をおこさないよう予防的抗痙攣剤の投与をすることにより、以前に比べ門脈体循環シャントの手術の成功率はひじょうに高くなったように思います。手術が怖いから、症状がないからということで手術をためらっておられる方もおられますが是非手術をご検討いただくことをお勧めいたします。写真:C-ARMにより確認した門脈枝です。  S.S

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若齢大型犬の跛行

20年10月20日

今回はワンちゃんの跛行に関するお話です。

『跛行』とは何らかの障害により、ケンケンするなど正常な歩行ができないことを指します。跛行の原因となる疾患は様々ですが、犬種や年齢によってある程度絞ることができます。

 例えば汎骨炎と呼ばれる疾患があります。汎骨炎は体重増加に伴う原因不明の跛行で5-14ヶ月齢に見られます。この疾患は一般的に触診とレントゲンにより診断します。きっかけがなく足や腕を痛がったり、痛がる足が変わったり、発熱、食欲不振など症状が出る場合もあります。レントゲン上では骨髄のなかの血管周囲が白くなる特徴があります。場合によっては血液検査で白血球の中の好酸球の増多を伴うことがあります。多くの場合、発育とともに自然治癒します。

 次に紹介するのは離断性骨軟骨炎です。これは肩や膝、足の関節で起こるもので発育期(4-8ヶ月齢)に見られます。異常な速さで発育する軟骨が硬い骨になる際に異常がでる病気で関節の一部が欠損してしまい、一部は骨片として残ります。痛みの程度は強く、足を上げる跛行を示すことがあります。程度によりますが、骨片を取り除く手術が適応になる場合があります。

 また、成長期のワンちゃんで考えなければならない病気が栄養素の不足が原因になるものです。肥大性骨異栄養症は全身性の病態で、特に長い骨の骨幹端で異常がみられます。通常、病変は両側性におこります。原因は不明とされていますが、関連因子としてウイルスなどの感染、食事性のCa(カルシウム)とP(リン)の不均衡やビタミンC欠乏などの不適切な栄養管理が考えられています。グレートデンなどの大型犬の急速な成長期にみられ、発生の平均年齢は3-5ヶ月齢です。症状としては、一時的な跛行、運動をしたがらない、歩行時の疼痛、発熱などがあります。

今回あげたものは若いワンちゃんが跛行を示すものの中でも、ほんの一部の疾患に過ぎませんが、どの病気もレントゲンをとることで特徴的な所見がえられ、診断に繋がります。また、跛行の原因は骨や関節の病気だけでなく、爪やトゲが刺さっていたり、皮膚炎なども原因になります。少しでも歩き方がおかしいと感じた場合は一度病院に来てくださいね。

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K.G

内服薬の副作用がでた甲状腺機能亢進症の猫ちゃんの手術

20年10月20日

今回の猫ちゃんは13歳10ヵ月の避妊済みのメス猫ちゃんです。副作用のため血液の白血球がすくなくなり抗甲状腺薬(飲み薬)も使えなくなりました。白血球が少なくなると人間では発熱、全身倦怠感、咽頭痛などが起きると言われています。免疫がおさえられることによる弊害が起きてくるようです。内服量を少なくしましたが残念ながらダメでした。いつもは甲状腺の値を十分抑えたのち手術をするのですが、すこし高い値のまま思い切って手術を行うこととしました。CT検査では左側だけの肥大で悪性の疑いも低く、右側は小さめで、異所性甲状腺も認めず左側甲状腺摘出手術を行いました。上皮小体の温存状態も良好だと思われます。1週間後の検査ではT4は若干低めでありますが良好でまったく治療の必要がなくなりました。反対側の甲状腺が機能亢進症を起こす可能性は残されているものの現段階では内服や検査から解放され高血圧慢性腎不全の進行も抑えることができました。内服薬の副作用のおきる猫ちゃんではそのまま様子を見ておられる方も多いようですが多くの猫ちゃんが短命で終わります。思い切って手術することをお勧めいたします。S.S

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猫の便秘について

20年10月15日

便秘とは、排便回数が低下したり、宿便が長期間停滞し、しぶりを伴う排便困難が認められることを言います。犬にはほとんど便秘はないとされていますが、猫はいろいろな要因から便秘を起こすことがあります。猫の便秘は、器質的便秘もしくは機能的便秘の2種類にわけられます。器質的便秘とは、身体の構造の異常によって便の通過が妨げられることによって発生し、そのほとんどは骨盤狭窄によるものとされていますが、稀に消化管内や骨盤腔内の腫瘍による通過障害なども存在します。機能的便秘には、神経異常や消化管の運動性の低下によるものの他、排便を我慢しすぎたことによって直腸襞の刺激に対する感受性が低下することによるものがあります。秘はその期間が長ければ長いほど、宿便への水分の再吸収が起こる為、さらに排出しづらくなります。ひどくなれば、嘔吐や食欲不振といった消化器症状が認められることもあり、全身状態の悪化にもつながります。治療方法は、直接溜まった宿便を肛門から排出する用手排便、浣腸がメインとなります。それらの処置後、再発防止のために、便を柔らかくするお薬を使用します。骨盤狭窄による器質的便秘の場合には外科手術が適用となることもあります。S.K

猫にアロマセラピーは要注意!? シトラスオイル中毒って知っていますか?

20年10月10日

冬になり加湿が必要な時期になってきましたね。加湿器にアロマオイルをいれていい匂いを楽しんでいる方も多いと思います。

ただお家で猫を飼っていらっしゃる方には知っておいてほしい猫ちゃんの中毒があります。

それはシトラスオイル中毒です。 シトラスオイルとはみかんやオレンジなど柑橘系の植物から作られるオイルで、その匂いからアロマオイルや芳香剤、食器用洗剤やシャンプーに使われており、動物用の虫除けにも含まれていることもあります。特にアロマオイルは成分が濃縮されているので注意が必要です。シトラスオイルは植物由来で、天然成分として知られているので動物に対しても安全性が高いと誤認されています。中毒の原因は柑橘類の皮に含まれるリモネンリナロールです。

猫はシトラスオイルに対する感受性が犬よりも高いことがわかっています。シトラスオイルは親油性なので、経皮的、経口的に速やかに吸収されます。d-リモネンは皮膚に付着するとたった10分で最高血中濃度に達し、シトラスオイルが含まれたシャンプー剤などを直接塗布した場合に、重度の皮膚炎をおこした症例がいくつも報告されています。

シトラスオイル中毒の臨床兆候としては、身体に付着したものを舐めることにより味覚が刺激され大量に流涎したり、運動失調、筋肉の震えが知られており、ほかに中程度から重度の低体温が生じることがあり、そのほか虚弱、活動性の変化(攻撃的になる)、鳴き声を発する、麻痺、散瞳などが起こるとされています。

皮膚に付いた場合、直後であれば食器用洗剤で皮膚を洗うことで除染します。低体温が生じるため、体温調節が重要になってきます。そのほか、臨床症状に応じた対症療法が必要で、重度の皮膚徴候が生じた場合は、抗菌薬、輸液、創傷治療などの積極的な治療が必要となります。早期に治療してあげると予後は良好です。

もちろんシトラスオイルだけではなく、アロマオイルに含まれるフェノール類やケトン類といった香りの成分に猫は敏感です。

アロマなどを炊いていて急に猫ちゃんが大量にヨダレを垂らして具合を悪そうにしているなら、食器用洗剤や猫用のシャンプーで毛に付いたオイルを落として様子次第ではすぐに近くの動物病院に相談しましょう。

人に使えるから、犬に使えるからといってあまりよく調べずに猫につかってしまうと危険なものも多いので注意しましょうね。

Y.N  

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脂肪酸のすすめ

20年10月04日

 必須脂肪酸と呼ばれる、体内で合成できない、食事などから接種しないといけない脂肪酸は、私たち人間でもその有用性が多く報告されていますね。

たとえばアルファリノレン酸の含まれるエゴマ油・シソ油、魚介類に含まれるDHAなどは有名ですね!

必須脂肪酸の中でも、とくにn-3系と呼ばれる脂肪酸は、

①炎症を抑える効果

②血流の改善

が知られており、関節炎の症例などでもよくサプリメントを使用して、実感として良好な反応を得られています。

 また、他に皮膚・被毛 心血管 腎臓 神経・認知機能の健康維持を目的に脂肪酸のサプリメントは効果が報告されています。

 先日、皮膚科学会の方でも脂肪酸の皮膚疾患における有用性の発表が行われましたが、

犬アトピー性皮膚炎や、猫の外傷性脱毛(食餌性や心因性のストレスなどいろいろな原因によって猫が自ら皮膚を舐めることで発生する脱毛症)、皮膚に限局する免疫疾患であある円盤状エリテマトーデスなどでも、脂肪酸投与で有効な反応が認められたようです。

 もちろん、皮膚の炎症を抑えるときのステロイドの投薬や、感染があった際の抗生剤の投与、免疫介在性疾患における免疫抑制剤などが必要な場合は一緒に行うべきで、サプリメントはあくまでも単剤で効果があるというものではなく、治療の補助を行うものではあります。

 しかし、脂肪酸のサプリメントという、ほとんど副作用の認められないもので、さらに皮膚の状態が改善するのであれば、積極的におすすめしたいですね。

 脂肪酸の摂取に関しては、脂肪酸を含むフードへの変更という手段もありますが、脂肪酸は酸化により劣化しやすいという特徴があるため、なかなかフードの管理が難しい部分があります。その点においては脂肪酸のサプリメントの方が、カプセルの中に入っているので、劣化で効果が弱まることは心配しなくてもいいですね。

 また、カプセルが飲めない子でも、中身だけ穴をあけて飲ませることもできるので、その点については心配いりません。

いまの治療に合わせて、脂肪酸を追加で与えてみたい方、通常は、効果が出るまで1月~などある程度の期間を飲ませていただきたいですが、まず試してみたい方は一粒からでも購入できますので、ぜひぜひご相談してくださいね。

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M.K