最近のブログ
最近のエントリー
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
春は血液検査、尿検査の季節?
12年04月18日
春は狂犬病予防注射やフィラリア予防のシーズンですよね。フィラリア予防薬を内服するためにフィラリアの感染の検査が必要ですが、そのとき一緒に血液の健康診断してみましょう。
この春の時期の血液検査で相当数の犬、猫ちゃんの病気が発見されます。腎臓病、肝臓病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、腫瘍などは最たるものです。早期発見が重要な病気が多く普段の血液検査の重要性を強く感じます。また個体差がある正常値を把握しておくことは病気になったときの重要な指標になります。
尿検査も重要な検査です。糸球体腎炎、慢性腎不全、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、膀胱腫瘍、前立腺異常、腎臓や膀胱の結石症などが発見されます。
人間のようにしゃべることができない犬、猫ちゃんのためにぜひ健康診断をお勧めします。
フィラリアの検査のときの血液健康診断は、企業に委託しできるだけ安価でお受けいただけるように工夫しております。ご相談ください。
耳血腫
12年04月17日
耳には軟骨があり、その耳介軟骨膜と耳介軟骨の間、あるいは耳介軟骨内に血様の液体が貯留することで耳介が腫脹する病気です。飼い主さんは耳が腫れていることに気づき、来院されます。
犬種はレトリバー犬種やアメリカンコッカースパニエルが多く、垂れ耳や長耳などの耳の構造が要因にもなります。犬が多いですが、猫やフェレットにもみられます。基礎疾患として外耳炎があることが多く、耳を振ることで軟骨を損傷する可能性が原因として多いです。そのため外耳炎の管理も耳血腫の治療・再発予防として重要となります。外耳炎がなくとも耳血腫を発症する症例も存在し、物理的な原因だけでなく病因として軟骨の変性も考えられています。耳血腫は治療しなくとも吸収されますが、耳介の著しい瘢痕収縮が生じて美観を損なうだけでなく、それにより耳道口を閉塞させることで慢性的な外耳炎を招きます。
治療としては外科的治療(手術)、内科治療があります。外科的には切開して内容液を除去し、ドレーンなどを設置し、圧迫包帯を行ないます。短期的なグルココルチコイドは軟骨の異化作用を抑制するためトリアムシノロンの注入療法や、貯留液を減少・消失させるインターフェロンの注入療法が内科治療としてあります。内科療法でも外科療法と同等の結果であると報告もあり、瘢痕化を招きにくいインターフェロン療法が注目されています。
これから暖かくなり、耳のトラブルが多くなる季節になります。なにかお困りの際は当院にご相談ください。
フィラリア予防はいつから必要?
12年04月10日
蚊にかまれて心臓および肺動脈に素麺状の虫が寄生するのが犬フィラリア症です。
内服による予防または年に2回の注射で予防いたします。
予防期間は地域によってさまざまで気温によって予防期間が異なります。
少し古いものになりますが1997~2006年の兵庫県におけるのデータHDU(第10回日本犬糸状虫研究会)を参考にしますと
10年間の平均感染期間 :5月12日~11月8日 最低予防期間6月12日~12月8日
暖かい年を参考にした感染期間:4月30日~11月16日最低予防期間5月30日~12月16日
となっております。(兵庫県内でも地域差はあります。)
フィラリア殺虫剤として働く抗生物質を、感染したあとから使用することにより予防を行なうため、4月や5月はまだ予防期間としては早いが12月までは予防が必要であることをご理解いただければと思います。不明な点があればご相談ください。
犬の胆嚢粘液嚢腫
12年04月05日
胆嚢粘液嚢腫は、ムチンを豊富に含んだ胆汁が胆嚢内に蓄積することによって胆嚢が拡張し、進行すると粘液物質によって総胆管の閉塞を引き起こしたり、過度の胆嚢の拡張で胆嚢動脈を圧迫することにより胆嚢壁の虚血性壊死を引き起こしたりすることによって、胆嚢破裂を引き起こす可能性がある疾患です。
胆嚢粘液嚢腫を形成する素因として、中~高齢、胆嚢の運動障害、原発性、特発性、二次性(膵炎、ネフローゼ症候群、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症などの内分泌障害など)の高脂血症や高コレステロール血症などが考えられています。胆嚢の運動性は、加齢性もしくはステロイドの影響によって低下すると考えられており、胆嚢内で胆汁が停滞することによって胆汁の濃縮が起こり、胆泥の形成が促進されます。この胆泥が進行すると胆嚢粘液嚢腫に発展する可能性が示唆されています。また、胆嚢粘液嚢腫の犬でABCB4遺伝子の変異が報告されており、遺伝子の変異が本疾患の病態に関わっている可能性も示唆されています。
胆嚢粘液嚢腫による臨床症状は程度により様々であり、また非特異的です。高頻度で見られる症状は、嘔吐、腹部疼痛、食欲不振、黄疸などです。胆嚢破裂まで引き起こした場合は、腹部疼痛や頻呼吸、黄疸などが顕著に認められ、腹膜炎が重度になれば腹水が貯留し、腹囲膨満が認められることもあります。
診断は、X線検査やCT検査によって診断できる場合もありますが、多くの場合は超音波検査で行われます。しかし、超音波検査のみでは重症度を評価することが難しいため、臨床症状や血液検査などと合わせて総合的に診断を行います。
治療は、胆道の閉塞がない場合とある場合で異なります。胆道閉塞がない場合は、基礎疾患がある場合は基礎疾患の治療を行い、あわせて食事療法、薬物療法が行われます。また、予防的に胆嚢摘出を行うことも治療の選択肢として考えられます。食事療法は、低脂肪、低炭水化物、(メチオニンが豊富な)高蛋白質の食事を頻回与えるようにします。薬物療法は、抗菌薬に加え、胆嚢の運動性を改善したり、胆汁排泄を促すような薬物が使用されます。一方、胆道閉塞がある場合は、上述の内科的治療は困難であるため、なるべく早期に外科的な胆嚢摘出を行います。
近年、胆嚢粘液嚢腫と診断される症例が増加してきています。動物の高齢化や肥満などが一因として考えられますが、初期の段階では無症状であり、むしろ症状が発現した段階では病態としてかなり進行した状態であることが多い疾患です。春の健康診断の一環として、腹部の超音波検査も取り入れてみてはいかがでしょうか?