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最近のエントリー

3月30日 葉月会 腫瘍学セミナー

カテゴリー:セミナー

19年03月30日

肛門嚢アポクリン腺癌の治療

酪農学園大学  廉澤 剛先生

犬の肛門周囲の腫瘍には肛門周囲腺の腫瘍と肛門嚢の腫瘍との2つあります。その中でも肛門嚢腺癌は高カルシウム血症を引き起こす代表的な腫瘍の1つで、リンパ節や肺への転移を起こす悪性の腫瘍です。基本的には完治は難しい腫瘍ではありますが、リンパ節転移による高カルシウム血症や排便困難の改善のため、原発巣およびリンパ節の摘出が推奨されています。今回は肛門周囲腺癌の摘出に関して解剖から手術の方法について病理組織結果に則って、以前と比較して現在の手術法について動画を用いて詳しく説明していただきました。

また、肛門周囲腺癌に対する抗がん剤治療の効果についても最近の実績に基づいた結果からその有用性についてお話していただきました。以前は高カルシウム血症に対する処置が主でしたが、腫瘍自体の縮小効果も期待されるようになっており、放射線以外の選択肢の1つとして挙げられていました。

肛門周囲腺癌は触知できる位置にありますが、症状としては進行するまでは劇的なものではないため、日々の身体検査により初期の病態を見逃さないようにし、しっかり治療していこうと思います。

S.A

3月28日 葉月会 循環器学シリーズセミナー

カテゴリー:セミナー

19年03月30日

菅野信之先生による、「心臓バイオマーカー 外注するタイミング」のセミナーに参加させていただきました。

バイオマーカーとは、身体の状態を客観的に測定し評価するための指標で、診断や治療に用いられます。

心臓におけるバイオマーカーには、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、トロポニンIといったものが主に利用されています。

例えば、NT-ProBNPが高値ならば心臓が悪い可能性が高い、という風に使います。

今回のセミナーでは、各バイオマーカーの特徴や、どのタイミングでの測定が効果的であるのか、またその応用方法などについてご教授いただきました。

心臓疾患の診断は、聴診、エコー検査、レントゲン検査といった方法で行います。

例えば猫ちゃんなど心臓エコーが困難な場合にも血液検査で診断ができ、呼吸器疾患など他の疾患との鑑別にも使えるため、バイオマーカーの測定は有用であると考えられます。

当院でも、心臓チームによる心臓疾患手術を行う際にはその前後でNT-ProBNPを測定し、経過観察の指標としています。

アメリカなど海外において心臓バイオマーカーは、健康診断時などでも日常的に測定されているようですが、日本ではそれほど普及していないのが現実です。

心臓疾患を早期に発見するためにも健康診断における心臓バイオマーカーの測定は、聴診、心臓エコーなどと組み合わせて行うことがおすすめです。S.K

3月21日 志学会 症例検討会

カテゴリー:セミナー

19年03月22日

志学会症例検討会に参加いたしました。

総合コメンテーター
奥田優教授(山口大学 臨床獣医学講座)
板本和仁准教授(山口大学 動物医療センター副センター長)

今年は16題の演題があり、活発な質疑応答のある有意義な検討会になりました

当病院からは「胆嚢炎の診断にCT検査が有用であった犬の一例」、「腸間膜リンパ節に膿瘍の認められたリンパ腫の犬の1例」の2題を発表させていただきました。

皮膚科から、抗癌剤の用量、口腔疾患、リハビリテーションについてと、症例発表の内容は多岐にわたり、臨床経験の浅い若手からベテランまで多数の発表があったことが印象的です。

また、懇親会でも各病院の先生と交流ができ、いい勉強になりました。
M.K

第6回 ながたの皮膚科塾

カテゴリー:セミナー

19年03月15日

最終回を迎えたながたの皮膚科塾。

最後のテーマは「外耳炎」と「脂漏性皮膚炎」でした。

どちらも極めて日常的で、遭遇する回数の多い疾患です。

私自身あまりにもよく診る疾患であるため、「難しい病気」とは捉えていませんでした。

ところが、この半年間のセミナーで皮膚科を一から学び直した上で、改めてこれらの疾患について考えてみると、どちらも複雑で一筋縄ではいかない疾患であると感じました。

特に、外耳炎に関しては、再発を繰り返すことに悩んでいる患者さんが多くいらっしゃいます。

では、なぜ再発したり、慢性化したりするのでしょうか?

外耳炎の再発・慢性化の原因は多数考えられます。

例えば、温度や湿度などの環境だったり、ご自宅でのお耳のケアが間違っていたり、使っている薬剤が身体に合わなかったり、そもそも先天的なお耳の構造によるものだったり、、、

多くの外耳炎は痒み・痛みを伴いますので、わんちゃんに多大なストレスを与えます。

軽度のものであれば、原因を排除し、お薬を使うことによって治療ができるのですが、慢性化してお耳が塞がってしまっている場合には外科的手術が必要です。

もしおうちのわんちゃんが繰り返す外耳炎に悩んでいたら、ぜひお早めにご相談くださいね。

いっしょに原因を突き止め、わんちゃんに快適な生活をプレゼントしてあげましょう。

さて、全6回の「ながたの皮膚科塾」がとうとう終わりを迎えてしまいました。

永田先生をはじめ、皮膚科塾をご卒業された先生方、今回初めて参加された先生方には大変お世話になりました。

受講後の懇親会では毎回、皮膚についての熱い討論が交わされており、学びの多い時間でした。

半年間かけて学んできたことを生かし、日々の診療に取り組んでいきたいと思います。S.K

3月12日 葉月会 猫の獣医学シリーズセミナー

カテゴリー:セミナー

19年03月12日

第5回 猫の獣医学シリーズ

猫の肝臓病

石田 卓夫 先生 ねこ医学会(JSFM) 会長

猫の獣医学シリーズ、今回からテーマは肝臓病です。

まず、猫の肝臓病は犬の肝臓病とは異なっている、ということからお話は始まりました。犬のような肝炎ウイルスはなく、猫の肝疾患でもっとも発生頻度の高い疾患は肝リピドーシス。比較的若い太った猫、食欲不振、顕著な黄疸、肝腫大、嘔吐→鑑別診断の上位3つは肝リピドーシス、胆管肝炎、三臓器炎。

症状が特異的であり、かなり肝疾患が疑われる場合もあれば、非特異的で、鑑別診断リストの中に肝疾患が含まれる場合、それから、無症状でたまたま肝疾患を疑うような検査データが得られた場合、肝疾患が発見されるタイミングは状況によって様々です。

今回は診断に至るまでの考え方から、お話を聞くことができました。

M.K

M.K

第22回 日本獣医皮膚科学会 学術大会-皮膚免疫-

19年03月10日

3月10日、東京都の両国で行われた「第22回 日本獣医皮膚科学会 学術大会」に参加させていただきました。たくさんの講演を通して非常に多くの知識を得る素晴らしい機会となりました。

アトピー性皮膚炎や、アレルギー性皮膚炎と診断された患者さんに対して、いつもお伝えする言葉があります。それは、「生涯お付き合いしていく病気だ」ということです。つまり、治療の目的は「痒みのコントロール」になります。しかし、それらの疾患を根本的に治療する方法は存在します。それは、アレルゲン特異的免疫療法(ASIT)と言います。ASITは、昔から用いられてきた犬や猫におけるアレルギー疾患の治療法のひとつです。現在広く用いられているアポキルやアトピカといった薬剤に対して、根底的なアレルギーを天然のものによって治療し、アレルギー自体を退行させることができる唯一の方法とされています。

犬におけるASITには、皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)の2つが存在します。それほど多く研究されているわけではないのですが、これら2つはほぼ同様の効果を有するという可能性が示唆されています。

SCITとは、アレルゲン濃度を漸増させた抽出液を、治療開始時には頻回に、維持期には低頻度で皮下に注射するという方法をとります。対してSLITは、注射ではなく舌下や口腔内に、抽出物を直接投与します。それぞれに利点、欠点がありますが、飼い主様の生活スタイルによって選択することができます。例えば、SLITの大きな利点のひとつが投薬の簡便さだと言われています。多くの犬は舌下剤をおやつと見なすため、投薬はスムーズに行える場合がほとんどです。しかし、1日2回確実に投与する必要があるため、仕事で忙しい人や生活リズムが不規則な人は、低頻度で注射を行うSCITの方が楽だと感じるかもしれません。また、稀にSCITでアナフィラキシーショックを起こすことがありますが、SLITは注射でアレルギーを起こしたことがある個体にも使用できるとされています。そして、ASITの最大の欠点はというと、効果が出るまでに時間・費用がかかる上、必ずこの治療が奏功するとは限らないということです。ただし、これらの治療法は、現存する新しい治療法と併用することができます。ASITによる効果が得られるまでの間、併用薬で症状を緩和させることができると考えられます。

このように、アレルギー性皮膚炎の治療には選択肢が複数あります。犬の性格、飼い主さまの生活スタイルなどを考慮し、ご家庭に合った治療法を提案できるよう、日々精進してまいります。S.K

に参加させていただきました。たくさんの講演を通して非常に多くの知識を得る素晴らしい機会となりました。

アトピー性皮膚炎や、アレルギー性皮膚炎と診断された患者さんに対して、いつもお伝えする言葉があります。それは、「生涯お付き合いしていく病気だ」ということです。つまり、治療の目的は「痒みのコントロール」になります。しかし、それらの疾患を根本的に治療する方法は存在します。それは、アレルゲン特異的免疫療法(ASIT)と言います。ASITは、昔から用いられてきた犬や猫におけるアレルギー疾患の治療法のひとつです。現在広く用いられているアポキルやアトピカといった薬剤に対して、根底的なアレルギーを天然のものによって治療し、アレルギー自体を退行させることができる唯一の方法とされています。

犬におけるASITには、皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)の2つが存在します。それほど多く研究されているわけではないのですが、これら2つはほぼ同様の効果を有するという可能性が示唆されています。

SCITとは、アレルゲン濃度を漸増させた抽出液を、治療開始時には頻回に、維持期には低頻度で皮下に注射するという方法をとります。対してSLITは、注射ではなく舌下や口腔内に、抽出物を直接投与します。それぞれに利点、欠点がありますが、飼い主様の生活スタイルによって選択することができます。例えば、SLITの大きな利点のひとつが投薬の簡便さだと言われています。多くの犬は舌下剤をおやつと見なすため、投薬はスムーズに行える場合がほとんどです。しかし、1日2回確実に投与する必要があるため、仕事で忙しい人や生活リズムが不規則な人は、低頻度で注射を行うSCITの方が楽だと感じるかもしれません。また、稀にSCITでアナフィラキシーショックを起こすことがありますが、SLITは注射でアレルギーを起こしたことがある個体にも使用できるとされています。そして、ASITの最大の欠点はというと、効果が出るまでに時間・費用がかかる上、必ずこの治療が奏功するとは限らないということです。ただし、これらの治療法は、現存する新しい治療法と併用することができます。ASITによる効果が得られるまでの間、併用薬で症状を緩和させることができると考えられます。

このように、アレルギー性皮膚炎の治療には選択肢が複数あります。犬の性格、飼い主さまの生活スタイルなどを考慮し、ご家庭に合った治療法を提案できるよう、日々精進してまいります。S.K