難治療・高度医療について

処置室 / 検査室

高度医療を維持するためのネットワーク

現在の獣医療は人間の医療と同様に日々進歩しております。CT、MRI、放射線療法も動物の世界でもさかんに利用されるようになりました。脳外科、心臓外科など、日本は欧米に比べてむしろ進んでいる分野もあります。ただ残念ながら、動物病院はまだまだ専門科だけで経営が成り立つことは困難です。そのため現在の高度獣医療はたくさんの獣医師たちの協力や連携によって成り立っております。当院では、一般診療すべてにおいて、できるだけ高い水準の治療を提供できるように心がけており、ほとんどの診療や手術を当院にてこなします。しかし、特殊な分野におきましては葉月会、ネオベッツなどの獣医師たちで作っているグループのほか、京都AR、大学の先生方や多くの動物病院と連携をとって、皆様の要望される高度医療に十分対応できるように努めております。無理にどんな症例でも抱え込むことは好ましいことではないと考えておりますし、そのためのネットワークつくりも必要な仕事の1つと考えており、最後まで責任をもって、皆様に満足していただける獣医療を提供したいと思っております。獣医療はまだまだ発展途上であり、当病院も他の熱心な獣医師たちと一緒に、熱意をもって難治療、高度医療にかかわっていく所存です。

当院が取り組む医療、疾患の紹介

自己活性化リンパ球療法

患者様本人の血液からリンパ球を分離し、活性化増殖させ点滴で体内にもどす療法です。
増殖させる過程でリンパ球に腫瘍細胞の抗原を認識させ選択的に腫瘍細胞を攻撃させることもあります。癌の再発予防や癌の進行抑制、QOLの改善、延命に効果が期待できます。
人間の多数の医療機関で活性化リンパ球療法がおこなわれており、その有用性が証明されております。治療に際して非常に副作用がすくないのが特徴です。
当院でも無菌室やCO2インキュベーター、クリーンベンチなどを用意し、動物におきましても活性化リンパ球療法を行っており、癌とたたかう動物たちとご家族様の手助けがすこしでもできるように努めております。
研究施設とも連携をとり、症例が増えるに従って、活性化リンパ球療法に非常に効果が期待できる癌の種類がすこしずつわかってきました。一般的にはほとんどの症例が死亡すると言われている癌においても完治した例が当院でも増えております。
免疫療法は今後ますます発展していくことが期待されています。

血液透析

日本は血液透析大国で約30万人の方が透析を受けておられます。犬や猫たちにも血液透析をうけさせたいというご要望にもお応えできるようになりました。現在は最新型の透析装置が開発され、いままでより性能もあがり透析がおこないやすくなっています。腎臓の機能が低下した動物の血液から尿毒素などを除去し、きれいな血液にして体内に戻します。慢性の腎不全でも使用されますが、とくに急性腎不全では効果的で、血液透析をおこない利尿期にもちこめる症例が増えています。犬の子宮蓄膿症の無尿状態でも効果が期待できます。近年、猫の尿管結石で、全く尿がでなくなった重症症例がふえています。腎盂からの利尿を行ったうえ透析を行い、尿管結石の除去手術やSUBシステム装着手術で助けることも可能になってきました。

幹細胞療法

再生医療のひとつで、動物の体にあるさまざまな器官や臓器などに変化する細胞(幹細胞)を体外で培養し、失われた臓器や傷ついた細胞の再生を行う治療法です。骨髄液中の骨髄幹細胞、脂肪組織内に存在する脂肪幹細胞が、多能性間葉系幹細胞として良く知られています。実際に、骨折・骨癒合不全、脊髄損傷、炎症性関節炎、腎不全、肝硬変、自己免疫性疾患、膵炎などの治療に使用し、良い経過が得られています。前もって培養し、凍結状態で保存しておいた他家の幹細胞を、患者様に移植を行うという方法で治療されることも多くなってきました。椎間板ヘルニアの脊髄損傷、自己免疫性疾患に対する幹細胞移植では素晴らしい効果が多数出ています。

オゾン療法

ヨーロッパで人気のある治療にオゾン療法があります。悪性リンパ腫、癌、ウイルス性感染症、慢性腎不全、動脈閉塞性疾患、自己免疫性疾患、アトピー、脳神経退行性疾患、椎間板ヘルニア、膵炎を含む様々な疾患に効果があります。
血液を抜きそこにオゾンガスを混合し、オゾン化した血液をからだにもどす血液クレンジングや直腸経由でオゾンガスを注入する注腸法、オゾン化オリーブオイル、オゾン水による治療を行っています。血液クレンジングは効果の高い方法です。オゾンガス注腸法は、チューブにて注入する方法でわずかな時間で効果が得られ動物の苦痛もほとんどありません。
疾患だけでなく、老犬のボケ防止、健康維持の効果、アンチエージングが期待されています。老犬の前庭系障害、転移癌の治療にもとても良い効果がでております。
副作用もなく効果が高いため安心して治療をうけることができます。

高濃度ビタミンC点滴療法

新しいがん治療の一つとして近年注目されている治療法です。一番のメリットは、正常な細胞に影響を及ぼさないため、従来の抗がん剤治療に比べ副作用が少ないことです。治療に最適な抗がん剤がない、一般状態が悪くて抗がん剤治療ができないという場合にも適応されます。人では肺がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、脳腫瘍などでの治療効果が報告されています。末期の進行がんでもQOLの向上には効果が期待されます。オゾンの自家血療法と併用することでより高い効果が望まれます。

猫の甲状腺摘出手術
(甲状腺機能亢進症)

猫の甲状腺機能亢進症は9歳以上の1割が罹患していると言われております。治療法は、内科療法、外科療法があります。海外で行われている放射性ヨード療法は残念ながら現在の日本では行なうことはできません。外科療法は手術の難しさから避ける傾向があるようですが、内科療法に比べ、副作用の心配がない、すべての症状から解放される、長寿が期待できる、摘出手術をうけた猫の98%が甲状腺ホルモンの補充は必要なく完治が望めるという多くのメリットがあります。CTによる位置確認ののち手術を行います。当院で、たくさんの猫ちゃんが手術を受けられています。

猫の尿管結石手術

尿管結石が近年増加しております。比較的若年の猫にも発症が多く、多発猫種はスコティッシュフォールド、アメリカンショートヘヤー、ロシアンブルーがよくあげられますがどの種類でもおきます。結石の数によって手術方法は変わります。多数の石が腎臓や尿管に認められた場合は再発がおきにくいようにSUBシステム手術が選択されるのが一般的です。ステントは再発率の高さからあまりお勧めされておりません。尿管切開と腎瘻チューブの組み合わせ、腎盂切開術、尿管の転移術など症例に応じて手術法が決まります。尿管切開縫合はごく限られた症例に用いることがありますが狭窄、癒合不全が起きやすく症例を選ぶ必要があります。発症した場合すでに片側の腎臓は機能しなくなっている場合がおおく、閉塞している腎機能が低下しないうちに手術をする必要があります。

猫の尿管結石手術

犬の繁殖、
凍結精液の人工授精

排卵の時期を正確に把握することにより受胎率の上昇、頭数の増加、分娩日の特定、安産などが期待できます。血液中のProgesteroneというホルモンを計測することにより排卵日の確定が可能です。膣スメア検査は排卵後6日目に細胞の急激な変化がおこることにより評価できますが前もっての排卵日の予測は困難です。受胎しない場合の約半数は交配時期があっていないことにより起こります。かかりつけの病院で採血しクール宅急便で送っていただいて検査も可能です。推奨される測定器は日本ではバイダスだけです。
また、輸入凍結精液の人工授精は優秀な遺伝子を残すための方法として世界的に発展しております。開腹による子宮注入や内視鏡による人工授精も行っております。またフレッシュな精液によるバルーン人工授精も行っております。人工授精は交配による性病の防止のためにも海外では一般的になってきております。繁殖でお悩みの方はご連絡ください。

症例が多く
特に力を入れている疾患

甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、アジソン病、悪性リンパ腫、軟部外科・腫瘍外科、椎間板ヘルニア、膵炎