南が丘動物通信

犬の変形性関節症に対する治療薬『リブレラ』 23年07月05日

先日、猫の変形性関節症に伴う痛みを和らげる新たな治療薬として「ソレンシア」が発売されました。それに加えて、ワンちゃん用の「リブレラ」が発売されました。今回は、犬の変形性関節症やリブレラについてご紹介したいと思います。

犬の『変形性関節症』とは、骨と骨の間にありクッションの役割をもつ軟骨に過度の負担がかかることで関節が変形し、慢性的な痛みが生じる関節疾患の1つです。加齢・肥満・遺伝や過度の運動などさまざまな要因が関与すると言われています。大型犬で発生率が高い傾向にありますが、小型犬での発症も少なくなく、全ての犬種・年齢で知らず知らずのうちに罹患している可能性があります。慢性の痛みを示す病気の中で最も患者数の多い病気のひとつであり、ワンちゃんの40%以上がこの病気になっているとの報告もあります。

変形性関節症の症状としては慢性的な疼痛があります。ご自身のワンちゃんは最近、階段の上り下りやソファへの飛び乗りをためらったり、できなくなったりしていませんか?運動中にすぐ休憩するようになっていませんか?このような症状はすべて痛みのサインの可能性があります。一度、獣医師にご相談されてはいかがでしょうか。

変形性関節症に対して、これまではNSAIDsなどの抗炎症薬やω-3脂肪酸などを含むサプリにより関節を保護する治療などが一般的でした。今回紹介する新たな治療薬「リブレラ」は、モノクローナル抗体製剤として開発され、月1回の注射で犬の変形性関節症の慢性疼痛を和らげる治療薬として期待されます。

これまでの研究では、初回投与7日目から有意な鎮痛効果が発現したとの報告があります。また、NSAIDsとは作用機序や代謝・排泄機序が異なり、肝臓や腎臓への影響が最小限とされており、安全に使用できます。また、毎日の投薬に悩まされない点も大きなメリットと言えます。

変形性関節症は前述のように、どの犬種・どの年齢でもなり得る病気であり、ワンちゃんの生活の質を悪くする可能性があります。前述の症状に心当たりがあるワンちゃんの飼い主さま、リブレラに興味のある方がいらっしゃいましたら、お気軽に獣医師までご相談ください。

D.N.