VETS TECH WEB SEMINAR Vol.42 〜犬のクッシング症候群の治療を見直す〜
講師 松木 直章先生
クッシング症候群は、日々遭遇する内分泌疾患としてメジャーなものの一つであり、
多飲多尿、多食や腹部膨満などの変化でご家族の方が気づいて来院されるケースが多いです。しかし、実際に問題となってくるのは、血栓症や糖尿病、高血圧、易感染化による肺炎や尿路感染等の続発性疾患をたくさん引っ張ってくるという点にあります。
今回のセミナーでは、クッシング症候群の治療について見直し、再確認に重点を置いて解説していただきました。
治療には、トリロスタンを使用します。この時注意点として、重度の併発疾患を持つ動物には慎重に薬用量を検討しなくてはならないですが、特にクッシングの犬の腎機能の評価は要注意が必要です。クッシングでは、筋肉量が少なくなっているので、腎機能の指標の一つであるクレアチニンは比較的低値になるため、I R I S分類で評価していると過小評価になります。そのため近年腎不全の早期診断パネルとして活用されているS D M Aなどが指標の一つとして有効なのでは?と考えましたが、これについてはまだ論文の報告がないそうです。
クッシングの経過検査をA C T H刺激試験→1時間後に検査というものがメジャーでありますが、近年ではコートロシンの投与をせずにトリロスタンを飲む前と、飲んで3時間後にコルチゾールを測定することで、クッシングコントロールのチェックの指標とできる報告も出てき始めており、これは動物の検査負担も緩和できると言う点で考慮すべきなのかなと感じました。
そのほか、クッシングの治療中における危険信号とその対応、併発疾患の治療など、再確認すべき点を整理して解説していただきました。
冒頭でも述べた通り、犬のクッシング症候群はよく遭遇する疾患のうちの一つで、しっかりとコントロールをしないと、動物のQ O Lを著しく下げたり、時には致死的な状態にもさせ得るため、まず早期の発見と適切な治療を行なっていくべきだと再確認いたしました。
年明けには、クッシングの診断編も考慮しただけるみたいなので、期待したいです。
R.I