南が丘動物通信

蛋白尿と腎臓病 21年11月25日

 血液検査だけでなく尿検査もかなり重要な検査です。血液検査と組合わせることでさらに多くの情報をもたらしてくれるのですが、動物ではまず採尿が難しいことも相まってそれほど重要性が認識されていない印象があります。尿の濃さ(比重)や潜血など割と分かりやすい項目もありますが、尿検査の中でも特に蛋白尿については一般的に理解しにくいのですが異常がある場合は特に注意しなければならない項目です。

 そもそも尿中には蛋白はあってはいけないものです。腎臓のろ過装置である糸球体が壊れると蛋白が尿中に漏れることになります。人では腎性蛋白尿があることを腎障害というくらい尿蛋白は異常とみなされます。

 特に犬では糸球体疾患が多く、腎機能が低下するよりはるか前に尿蛋白が検出され、蛋白尿の出現によって腎臓の破壊が進みます。さらに高血圧を併発することが多く、高血圧はさらに糸球体を破壊することにつながります。そのため犬では蛋白尿の制御と同時に血圧の管理が腎臓病の進行抑制のために重要になります。一方猫では腎臓病のかなり後期に尿蛋白が出現することが多く、出現した場合には重症ということになります。

 蛋白尿になると腎臓病が進行するだけでなく、大事な蛋白質が体内から喪失してしまいます。その中でも特に血液凝固機能に関連する蛋白質が喪失してしまうことで凝固機能異常が発生し血栓症リスクが高くなります。つまり蛋白尿の治療を行うことは血栓症による突然死リスクを軽減することになりとても重要です。

 今回は腎臓病に関連する蛋白尿について述べましたが、蛋白尿は腎臓病以外にもフィラリア症、免疫介在性疾患や腫瘍性疾患など様々な疾患でも出現します。尿検査は動物に負担をかけることなく検査することができるため、ぜひとも健康診断でも取り入れたい検査です。採尿方法についてアドバイスできることもありますのでご相談ください。

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T.S.