南が丘動物通信

2021/7/27 鍼灸や漢方をどのように生かすか臨床例のご紹介 21年07月27日

国際中獣医学院日本校 講師 豊永先生

 頚椎椎間板ヘルニアのリハビリとして中医学を用いた症例でした。8歳のメスのドーベルマンで頸部椎間板ヘルニアの手術を受けるも2ヶ月経過しても起立ができずにいました。治療としてはビタミン剤の投与と漢方の処方、頸部に温灸を週1回で計20回の施術を行っていました。漢方は血液の流れをよくする目的で真武湯・疎経活血湯を使用していました。温灸で使用したのは風池、後肢少陽胆経、天柱、後肢太陽膀胱経、頭百会、督脈、大椎、大序、環跳でした。風池は目、鼻、口、耳などの動きを改善する作用があり頭や目をすっきりさせる働きがあります。認知症などにも効果があるとされています。後肢少陽胆経は後肢麻痺やてんかん、目の疾患に効果があるとされています。天柱は熱を抑え、頭と目をすっきりさせ、頸部・後頭部がこわばって痛むときに使用されます。後肢太陽膀胱経は脊髄疾患、関節疾患、泌尿器疾患、眼科疾患に効果があるとされます。頭百会は脳を覚醒させ眩暈、震え、痙攣などの症状を改善します。督脈は胃腸炎、肝胆疾患、免疫力増強、気管支炎、肺炎、脊髄疾患など様々な効果があります。大椎は呼吸器系や肩・腰背部の痛みなどに効果があります。大序は強筋壮骨作用、環跳は消炎解熱作用があります。経過としては8回目の施術で起き上がろうとする仕草がみられ、14回目の施術で後肢を支えると前肢で歩けるようになり、20回目の施術で不安定ながら歩行できるようになったそうです。西洋医学が部分的な治療を行うのに対し、中医学では体全体の働きを高め、動きや作用を補うことで治療を行います。中医学ならではの働きにも目を向けこれからの診察に生かしていければと思います。

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