動物病院において心臓病で最も遭遇する機会が多いのはワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症で、これはチワワ、マルチーズ、シーズーなどの小型犬の中高齢でよく見られます。心臓病ということでご家族の多くは不安に感じられるのか、日常生活において制限したほうがいいこと、またなにか注意しなければならないことがあるのでしょうか?とよく質問されるので、整理していこうと思います。
・運動
最もよく聞かれるのが「お散歩をやめたほうがいいのか?」ということです。心臓がどのくらい悪いのかで話が変わってきます。お薬を飲む必要がないあるいは少量しか服用していない軽度な子では運動制限はほぼ必要ないと考えますが、一度肺水腫になってしまったり不整脈が頻発している子では厳格な安静が求められます。しかしワンちゃんとご家族にとっての散歩が日々の暮らしの中で大きな楽しみなっている場合は、できるだけ短時間で走らないように、そして日中の暑い時間を避けるようにしましょう、というのが実際的と考えています。
・食事
ヒトでも同様に塩分の多い食事、つまり高ナトリウム食は心臓病の増悪因子となっています。しかしワンちゃんのフードはもともと塩分は多くないのでシニア用のフードで必要十分を満たしてくれるでしょう。なにより人の食べ物を与えないことが一番大事です。重度な心不全の子ではナトリウム制限食が推奨されます。
・肥満
太ると血圧が上昇したり呼吸数が増加したり心臓の働きを悪くするために、肥満はやはり増悪因子になります。しかし逆に痩せると心臓機能の低下を招くために気を付けなければなりません。何事も適度が良いということですね。
・ストレス
なにがワンちゃんにとってストレスなのかは難しいところですが、生き物はストレスを受けるとカテコラミンという物質が分泌され血圧が上昇して心臓の負担が増えます。そのために過度な緊張やストレスは避けたいところですが、たとえば日常的に行っていること(シャンプーやトリミングなど)は相談しながらできると考えています。
心臓病は他にも気管の病気や腎臓病などを伴うこともあり、また高齢の子が多く他の病気と合併することも多々あります。また上でも述べたようにその子の状態によってアドバイスする内容がケースバイケースなので、気になる場合は遠慮なく診察時にお尋ねください。
T.S.