南が丘動物通信

様々な疾患に応用される幹細胞療法 20年09月25日

 当院では脂肪幹細胞療法による細胞治療を実施しています。皮下脂肪から幹細胞を取り出して培養・増殖後に、動物に投与します。現在最も使用されている疾患は脊髄疾患、特に椎間板ヘルニアや脊髄梗塞です。神経保護作用や血管新生作用により脊髄機能の向上を計ります。また、幹細胞療法は各種サイトカインの働きにより自己修復力の強化や抗炎症効果を得られるために、様々な疾患への応用がはじまっています。 

 期待される疾患が、自己免疫疾患です。獣医療では様々な自己免疫疾患が存在し、免疫介在性溶血性貧血、慢性腸症などは遭遇する機会の多い疾患です。これら疾患は免疫が暴走して間違って自己の組織や細胞を破壊します。治療の基本はステロイド剤や免疫抑制剤ですが、ときおり治療中の再発や反応せずに死亡する症例が存在します。このような疾患に細胞治療を行うことで、幹細胞のもつ免疫調整作用や抗炎症効果によって改善が得られたり、あるいはステロイドの使用量の減薬できると報告されています。さらに乾性角結膜炎(ドライアイ)も自己免疫疾患であり、点眼薬による従来の治療に反応しない症例において幹細胞の局所注入によって涙液量の回復と症状の改善が報告されています。 

 大事なことは、なんでもかんでも細胞治療というわけではなく、各種疾患へは治療を行ったうえで良好な反応が得られない、難治性の症例に適用することが基本になります。

 また幹細胞療法による細胞治療は期待されてはいますが、まだまだこれから研究が待たれる分野でもあります。作用機序や効果についてだけに注目するのではなく、もちろん安全性が担保されることが絶対条件になると思われます。当院では獣医再生医療学会の定めるガイドラインに則り、動物再生医療実施施設として登録されております。細胞治療についてご興味のある方は当院までご連絡ください。

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↑培養した脂肪幹細胞

T.S.