ワンちゃん、猫ちゃんの歯は簡単に破折(歯が折れること)します。気付かれず見過ごされ、症状が悪化してから改めて口腔内を確認し、破折の存在を知るということも少なくありません。 破折は気付かれずに放置されれば歯髄炎や歯髄壊死をひきおこすこともあります。しかし初期の段階で発見されれば、歯の保存が可能であることが多く日常の口腔内のチェックによる早期発見が重要です。
破折では露髄が認められるかどうかは重要な観察すべき点で、肉眼的な判断が容易なこともあれば、咬耗や摩耗などにより露髄の判断が難しい場合や歯石の沈着により露髄の有無の判断が困難になっていることも多いです。このような場合は麻酔下での判断が必要になります。
破折により露髄を引き起こすと口腔内に歯髄が露出し、常に口腔内細菌にさらされることになります。場合によっては激しい痛みを伴うため、露髄があればなるべく早めの治療が推奨されます。
人の破折の原因は転倒、落下やスポーツ、交通事故などの事故がほとんどであるのに対し犬の破折の原因はわかっているもののうち 9 割以上が 『硬いものを咬んだ』ことによるものです。硬いものとしては ひづめ、ガム(デンタルガムを含む)、おもちゃ、 骨、ケージ、石などがあげられます。 ひづめは犬に与えるおもちゃとして普通に販売されており、さらに「乳歯の生えかわりを助ける 」や 「 歯石除去の為のデンタルケア用品として 」 などと謳われて販売されていることも多いです。しかし、実際は歯の破折の主な原因になっていることも多いです。また、ガムについてもデンタルガム(噛むことで歯垢歯石を機械的に除去する目的で作られたガム) が原因の多くを占め、飼い主が歯石蓄積予防を目的として与えた ひづめや ガムが逆に歯の破折をひきおこしてしまう可能性も十分に考えられます。
現在、さまざまな種類のデンタルガムが販売されていますが、比較的硬めの弾力性の無いガムを噛むことで破折することが多いです。さらに、デンタルガムの中には犬の体重別にサイズ・硬さが考慮されている製品もあり、その個体相応の大きさや硬さ、柔軟性のあるガムを与えることが破折を防ぐことにつながります。 またケージを噛む癖がある犬では 16 症例中 14 症例が犬歯の破折を引き起こしており、ケージバイトの癖がある犬では犬歯を注意深く観察する必要があります。
K.G