南が丘動物通信

11月9日 葉月会 臨床腫瘍学シリーズセミナー 19年11月09日

廉澤 剛 先生 酪農学園大学獣医学群獣医学類 伴侶動物医療分野 教授

(付属動物医療センター長、腫瘍科/軟部外科 科長)

第4回基礎からしっかり学ぶ臨床腫瘍学「手術計画」

 腫瘍学において外科療法とは腫瘍が限局している場合には、極めて効果的な局所療法ですが、外科には大きく分けて3つの目的が挙げられます。1つ目は「根治的手術」2つ目は「緩和的手術」。3つ目は「予防的手術」です。なかでも「根治的手術」の適応要件としては、"腫瘍が限局していて切除によって重要な機能をそこなわないこと"。"遠隔転移率の低い腫瘍であること"。などを満たす場合に限られます。切除する際に重要なことはサージカルマージンをしっかり取ることです。特に悪性腫瘍は周囲の正常組織に浸潤しており、真の腫瘍の広がりは認識している腫瘍の広がりより大きいため、切除する腫瘍との距離感が重要です。大きいサージカルマージンを必要とする代表的な腫瘍に肥満細胞腫があります。肥満細胞腫のサージカルマージンは筋膜をつけて摘出とありますが、これは筋膜が腫瘍が広がるのを抑えるバリアの機能をしているからと考えられます。ただ、腫瘍の大きさや発生部位によっては十分なサージカルマージン確保できない場合があり、このような場合は切除縁に放射線を放射したり、化学療法いわゆる抗癌剤を用いて抑える方法があります。

 今回は腫瘍の外科的治療に関して基礎的なお話を聞くことができました。ペットの寿命が伸びている一方で腫瘍の症例数も確実に増えています。今後、腫瘍を治療をする上で考えるべきことはたくさんありますが、提案の一つとして挙げられる外科的治療に関してオーナー様にしっかり説明できればと思います。

K.G