南が丘動物通信

猫の甲状腺機能亢進症、内科療法の副作用 19年03月16日

猫の甲状腺機能亢進症における内科療法の副作用について述べてみます。抗甲状腺剤として日本ではメルカゾールが使用されており海外製と比べて遜色ありません。しかし、約15%の猫に副作用がでると言われており、軽度の食欲不振、嘔吐というものをくわえると半分近くの症例におこると感じています。代表的な副作用は①嘔吐、食欲不振②顔面、頸部自傷性剥離③肝炎④貧血⑤血小板減少症です。残念ながら投薬量の明らかな指標は決まっておりませんが当院では1/8~1錠を少量から増やしながらコントロールしております。①嘔吐や食欲不振はおきやすいものですが少量から徐々に増量したり、投与回数の変更など工夫することによりに落ち着く場合がありますので病院にお問い合わせください。②~⑤は発症するとほとんどの場合投薬中止が必要となります。特に②顔面、頸部自傷性剥離は症状が激しくすぐに薬をやめなければなりません。内服をはじめて数週間たってからの発症も多く薬に関連していないように思われる方もいますがすぐに中止してください。今までに5頭症例を診ておりますが激しい痒みでおどろくほどひどいものです。アメリカ製の薬では免疫介在性溶結性貧血、重症筋無力症の報告もありますがメルカゾールではみたことはありません。初期投与量が多く抗甲状腺剤の投与することにより猫が急にぐったりしていたらすぐに診察が必要です。抗甲状腺薬が合わずに一時的に処方食y/dでコントロールできることもあります。どうしても困難な場合は甲状腺ホルモンが高値のままでも手術することもあります。人間では高値のまま手術をすると急性発作が起きるのですが猫ではまだ報告はありません。

写真は先日の16歳齢の猫の手術時甲状腺です。左が尾側になりますが正常解剖とは違い上皮正体が尾側についています。  S.SRIMG0011.JPG