マダニは比較的大型のダニで、成長や産卵のために動物の血液を利用する節足動物です。一般的に越冬した大人のダニは春先から初夏にかけて吸血動物に寄生し、その雌ダニが産卵します。このため卵からふ化した子供のダニが秋に大発生します。この子供のダニが吸血・脱皮後に若ダニの状態で越冬し、春先になって活動を開始するというパターンをとります。つまりマダニは季節関係なく繁殖し成長しているので春先から初夏にかけてだけでなく秋から冬にかけても注意が必要です。
春先から初夏にかけては大人のダニと若いダニが、秋には子供のダニの活動が活発になります。マダニが繁殖しやすい温度は13℃以上と言われていますが、1年中活動しているマダニがいたり、最近では冬も暖かいため、冬でも対策は必要になってきます。
犬や猫の場合は複数の製薬会社からいろいろなタイプのマダニ予防薬が販売されており動物の体質や目的に合わせて選択する必要があります。皮膚に滴下するスポットタイプの薬剤は、投与が簡単であることと、刺咬自体を予防できる場合もあることなどの利点があり、経口タイプの薬剤は安定した薬効、皮膚炎兆候のある動物にも適応可能といった利点がある。どちらの薬剤も用量と投与期間を守ることが非常に重要です。投与期間が開いてしまうと、薬効が低下し、十分なマダニの防除ができなくなります。予防薬の使用は一年を通して行うことが望ましいですが、最低でも、ノミダニの活動が活発になる3月から真冬前の12月は予防の必須時期になってきます。
ただ、薬剤だけでマダニの刺咬を100%防ぐことは不可能です。マダニに対する薬剤の効果はノミと比べて効果の持続が低いため、マダニの活動が活発な時期は、追加的な投与、あるいは市販されている犬用の虫よけスプレーなどの併用が有効です。また、マダニの多い茂みにはできるだけ立ち入らないことや、茂みに入ってしまった場合はブラッシングを行うことが有効です。特に吸血前のマダニにはブラッシングが有効で、ブラッシングをすることで体毛についている幼ダニにも気づくことができます。
マダニに刺されたと気づいた場合、刺されたと思われる当日であれば先の細いピンセットなどで、できるだけ皮膚に近い部分をはさみ垂直に引き上げることで除去可能ですが、無理やり引き抜いてしまうと口器の一部が皮膚に残されてしまう場合も多く、そうなってしまうと皮膚切開が必要になってきます。マダニに刺されたと気づいた場合は慌てず本院にご相談ください。
マダニは公園や河川敷にもいて、ほぼ1年中活動していることを忘れてはいけません。茂みにむやみに立ち入らせず、マダニ予防薬だけでなく、犬用の虫よけスプレーを併用し、ブラッシングをこまめに行い, マダニがついていないかチェックすることが重要です。
Y.N.