南が丘動物通信

がん免疫療法 18年09月23日

 2018年のノーベル医学生理学賞に京都大学名誉教授の本庶佑先生が受賞され、世界中が先生の功績を讃えています。先生はがん細胞が免疫から逃れるためのたんぱく質を発見され、それが今日のがん免疫療法へとつながるきっかけとなりました。がん免疫療法とは、従来のがん治療の3本柱(外科、放射線、化学療法)に加わる柱として注目される治療法で、生体の免疫システムを利用してがんを治療するものです。今回の受賞でさらに注目を集めるオプジーボという薬は、免疫にブレーキがかかるのを防ぐもので、これらは残念ながら獣医領域で実際に使用できるレベルにありません。一方で、免疫を強化してがん細胞を攻撃する免疫療法は、獣医領域でも活用されているものが多くあります。

 ひとつはインターフェロンを用いたサイトカイン療法で、これはアポトーシスの誘導、リンパ球反応の増強、血管新生抑制効果などがみられます。また当院でも実施している活性化リンパ球療法などの細胞免疫療法は、がん細胞を攻撃する中心となるリンパ球を培養・増殖して機能を高め、それを患者さんに戻すことで免疫力を高める治療法です。すべての腫瘍に効果がある、というわけではないのですが組織球性肉腫や口腔内悪性黒色腫などでは効果を実感しております。また米国では口腔内悪性黒色腫におけるがんワクチンが広がっていますが、これはまだ議論の余地がありそうです。

 免疫療法単独で腫瘍を縮小させたり消失させることは残念ながら難しいですが、良い点は副作用の少なさにあると考えます。メインの治療に併せて実施することで副作用なく相乗効果が得られます。ただし免疫療法を闇雲に、根拠なく治療を行うことは正しくありませんので、それぞれの患者さんに合った治療法をご相談して決定していけたらと思っております。がん治療や免疫療法についてご相談の場合はご連絡ください。

T.S.

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