南が丘動物通信

猫の肝アミロイド症 17年03月26日

肝アミロイド症はまれな疾患ですが、猫の肝疾患の中では最近増加傾向にあります。歴史的にはアミロイド症は腎臓と肝臓の両方に病変を形成し、シャム猫の家族性(遺伝性)疾患として知られてきました。しかし最近では雑種猫を含む多くの品種で肝臓のみに病変を形成する症例が散発的に報告されています。

アミロイドとはタンパク質の折り畳み異常によってできるでんぷん様の物質で、この異常タンパクが結合して線維状になり、組織や臓器に沈着した病態をアミロイド症といいます。アミロイドはその前駆体タンパクが何かによって数種類に分類させていますが、猫の肝アミロイド症で沈着してくるアミロイドは炎症によって生じるアミロイドAです。

慢性の口内炎や歯肉炎があって慢性の炎症を起こしている場合、その炎症から炎症性のアミロイドを作ってしまい、アミロイド沈着の引き金になることがあります。そのため猫エイズやヘルペス性口内炎を持っている猫は特に注意が必要です。

罹患した猫の肝臓は腫大し、硬くなり、ジャンプなどの日常的な行動によっても傷害を受けやすく、肝臓破裂が起こりやすい状態です。症状としては嗜眠、食欲不振、可視粘膜蒼白、跳躍脈、肝臓破裂を起こした場合は貧血、低血圧になります。診断は肝臓の病理組織学検査によって、FIP、肝リピドーシス、肝臓リンパ腫との鑑別を行います。アミロイドは針先吸引検査では検出されないためFNAによる細胞診は有用でありません。

現在のところ特異的な治療法は無く、症状を緩和させる支持療法がメインになります。炎症がアミロイド沈着の引き金になるので、炎症のもととなっている基礎疾患の緩和、抗酸化剤やビタミンKの補充を行います。漢方薬、サプリメント、オゾン療法、免疫療法なども組み合わせて維持治療をしていくことになりますが、長期予後は悪いです。

病気にならないためにできる事とすれば、口内炎が慢性化しないようコントロールしてやることかもしれません。

M.M.