南が丘動物通信

脊髄軟化症 17年01月22日

 犬猫にも椎間板ヘルニアなどの脊髄の病気が多く発生しますが、その中でもこの脊髄軟化症というかなり予後不良の転機をたどる病態があります。

脊髄軟化症とは脊髄を分断するような重度な脊髄損傷が起こったときに、その部位を起点として上、下方向に脊髄が進行的に壊死していく病態です。軟化症とは柔らかくなるという意味ですが、それは脊髄が壊死することでドロドロに溶けてしまうことを指します。壊死してしまった脊髄はそのすべての機能を失います。

原因は多くの場合は椎間板ヘルニアに続発することが多く、他にも重度の脊髄損傷を起こす疾患、たとえば脊椎骨折などでも続発します。まれに線維軟骨塞栓症でも起こすことがあるようです。椎間板ヘルニアから発生することが多いために、T3-L3随節に最も頻繁にみられます。当初は多くの椎間板ヘルニア同様、後肢はUMNsを呈しますが、この病態が発生すると脊髄が壊死するため、LMNsになります。そしてそのLMNsが上行性、下行性に進行していきます。頚髄分節にまで達すると、呼吸機能が麻痺し死に至ります。症状が現れてから通常は34日で亡くなります。この病態はまた強い痛みもあるために、不安に満ちた表情を示します。

急激な進行と臨床症状から診断は容易なため、MRIなどの各種画像診断を行う余裕がないのも事実です。この病態は現代の医学をもってしても治療することができず、あくまで対症療法的です。その発症をしっかりと注意しながらモニターする必要があります。

深部痛覚を失うほどの脊髄損傷患者での脊髄軟化症の発生率は10-15%との報告があります。冬の寒い時期は椎間板ヘルニアも多くなるために、この病態には特に注意しなければなりません。

T.S.