慢性腎臓病(CKD)は私たち臨床獣医師が日常の臨床現場でよく遭遇する疾患です。その評価には血中尿素窒素(BUN)、血中クレアチニン(Cre)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)をはじめとした血液スクリーニング検査、尿中タンパク/クレアチニン比(UP/C)を含めた詳細な尿検査、X線検査、超音波検査などが用いられています。CKDをはじめとした各種腎疾患の病態把握には、糸球体濾過率(GFR)の測定が最も正しく評価できると言われていますが、手技や測定の煩雑さから、あまり実施されていないのが現状です。
近年、獣医療における新たな腎機能マーカーとして対称性ジメチルアルギニン(symmetrical dimethylarginine:SDMA)の有効性が注目され、日本でも2016年7月からアイデックスラボラトリーズ株式会社でSDMAの測定が開始されました。
SDMAは生体における細胞内代謝のうちのL-アルギニン‐NO経路を調節する因子の一つであり、その90%以上が腎臓から排泄されるため、SDMAの測定はGFRを間接的に反映する検査としての有効性が示唆されています。また一部の報告では、BUNやCreよりも早期にCKDを発見できる腎機能マーカーであると言われています。
当院ではSDMAを含む血液スクリーニング検査も実施しております。伴侶動物の高齢化に伴い、CKDをはじめとした様々な疾患に罹患するケースは多くなっています。それらの疾患の早期発見を目的に定期的な健康診断をぜひご利用ください。
H.B.