南が丘動物通信

6月25~26日 第15回日本獣医がん学会 16年06月27日

東京で開催された第15回日本獣医がん学会に参加してきました。今回のシンポジウムは「頭頸部扁平上皮癌」がテーマでした。平田雅彦先生(アイデックスラボラトリーズ)と賀川由美子先生(ノースラボ)には病理的な側面を、和田昌絵先生(株式会社ORM神経病・読影センター)には画像診断について、相川武先生(相川動物医療センター)と細谷謙次先生(北海道大学獣医外科学教室)には治療(外科・内科・放射線療法)について講義いただきました。

扁平上皮癌は全身的に様々な部位に発生しますが、頭頸部は好発部位の1つです。犬、猫ともに発生率の高い腫瘍ですが、発生部位によって挙動が異なります。いずれも浸潤性が高く、口腔内、とくに歯肉に発生したものは骨の破壊を伴うことも多いです。一般的に犬では遠隔転移率は5~10%程度ですが、例外として扁桃に発生したものは約98%が所属リンパ節への転移を伴うとされており、転移巣が先に発見されることも少なくないという点は非常に興味深かったです。

頭頸部扁平上皮癌においては、外科療法のみが単独で根治的な治療法であり、解剖学的に可能な場合(耳介・下顎・上顎・鼻鏡)には外科療法が優先的に選択されますが、鼻腔内に発生したものや上顎などに発生し進行したものなど外科療法が不適応なケースもあり、そのような場合には姑息的治療として内科療法や放射線療法が用いられます。耳介や眼瞼周囲に発生した腫瘍症例での手術では皮弁を用いて切除による欠損部を補うことも多く、実際の手術の写真を交えて具体的に理解できました。扁平上皮癌は一般的に化学療法に対する感受性は低く、主軸となる外科および放射線療法の補助として併用されるケースが多いのですが、最近分子標的薬であるリン酸トセラニブが注目されており、紹介いただいた近年の報告からその有効性について学ぶことができました。

H.B.