南が丘動物通信

慢性腎不全における高リン血症の管理 15年08月09日

生体内のリンは主に腎糸球体濾過を介して排泄されるため、糸球体機能の低下に伴い、血清リン濃度は上昇します。この上昇が慢性的になると腎性二次性上皮小体機能亢進症が発生し、軟部組織への石灰沈着を促進させます。腎臓の石灰化は間質の炎症や線維化を引き起こし、さらに腎機能を低下させてしまいます。

最近の研究では、猫ではリンが1mg/dl上昇する事に死亡リスクは11.8%上昇することや、高リン血症がみられる猫の腎臓病は、そうでない猫よりも進行が速いなど、高リン血症は慢性腎臓病の猫の生命予後と相互に関連することが報告されています。

高リン血症に対して積極的にアプローチすることにより、動物の予後を改善し、慢性腎不全の進行を遅らせることが期待できます。食事中のリンの制限は高リン血症の管理に有効なことは既に多く報告されていますが、食事療法のみでは高リン血症は適切に管理できない場合もあり、このような症例ではさらに水酸化アルミニウムや沈降炭酸カルシウムといったリンの吸着剤の内服が適用されます。

H.B.