南が丘動物通信

肛門周囲瘻 15年02月15日

 肛門周囲瘻(ろう)は、肛門の周辺の皮膚に瘻孔(ろうこう)と呼ばれる病的な穴(トンネル)を形成する病気です。軽度のうちは体表に穴が開く程度ですが、症状の進行に伴いろう孔とろう孔がつながったり、直腸や腹腔といった深部にまでろう孔が達したりすることもあります。形成されたろう孔は炎症を起こしやすく、再発を繰り返すこともあります。根本的な原因は不明ですが、解剖学的な要因や免疫反応の異常が関わっている可能性があります。また食物アレルギーも原因ではないかと考えられていますが、未だ立証はされていません。平均5-8歳の雄においてよくみられ、大型犬、特にジャーマン・シェパードにおける発症率が高いとされています。
 肛門周囲の痛み、肛門周囲を頻繁に舐める/噛む/床にこすりつける、 排便困難、便秘、下痢、肛門周辺に膿瘍/出血/悪臭のある分泌物がみられるといった症状が認められます。
 治療は、肛門周囲の衛生管理(患部の毛刈り、洗浄)、細菌の二次感染に対しては抗生物質の投与をおこないます。またステロイドの全身投与を単独あるいは免疫抑制剤であるシクロスポリンと併用することで寛解が得られます。タクロリムス軟膏の塗布も局所の長期的管理に有効です。これらの内科療法の他に、手術によって膿瘍や懐死した組織を切除する外科療法をおこなう場合もあります。
 日頃から犬の排便行動に注意を払う必要があります。肛門周辺を頻繁に舐める、肛門部を床や地面にすりつけようとする、なかなか便をしない、排便時痛がって鳴く、といったような様子が見られた場合は、当院までご相談下さい。
H.B.