南が丘動物通信

環軸不安定症 14年09月21日

環軸不安定症は先天性あるいは発育性障害によって最初の2頸椎間の関節の不安定化により脊髄と神経根の圧迫を生じるものです。軸椎の歯突起の骨折、欠損、発育不全などの異常や環椎‐軸椎を支持している靭帯の異常形成、弛緩、断裂によって生じます。
若齢(ほとんどが一歳未満)の小型犬に多く、間欠的な痛みや、下を向けない、四肢のふらつき・協調不全~ひどい場合は不全麻痺を引き起こします。下を向くと痛みが増すため下を向けずに固まっている様子がよく見られます。
後天性に生じる環軸不安定症は外傷によるもので、歯突起の骨折や靭帯の断裂によっておこります。先天的に環軸不安定症があったが明らかな臨床徴候を示さなかった犬が外傷を機に顕著な脊髄圧迫や神経根圧迫が生じることもあります。
診断は明らかなものは無麻酔でのレントゲン検査で可能ですが,明らかでなかったり動物が非常に痛がる場合は麻酔下で行います。小型犬で環椎‐軸椎間の距離が4~5mm以上ある場合に環軸不安定症と診断するのが通例です。
内科的治療には頸部ギプスにより頸部と頭部を伸長状態に維持すること、短期間のコルチコステロイド投与を行います。内科療法で症状の軽減がない場合や臨床徴候の慢性病歴(30日以上)がある場合は外科的療法が必要となります。脱臼部位を整復し、圧迫病変の減圧、環軸関節の固定を行います。術後は固定が不適切な場合脊髄障害が出たり、喉頭の圧迫により嚥下困難が生じる可能性があります。
小型犬は抱っこする機会が多いですが、骨も非常に細いので場合によってはヒトの膝ぐらいからの高さからの落下でも骨折することがあります。十分注意してあげてください。M.M.