南が丘動物通信

免疫介在性の皮膚疾患 14年07月20日

免疫介在性の皮膚疾患はたくさんありますが、今回は円板状エリテマトーデス、落葉状天疱瘡、中毒性表皮壊死症についてお話しします。
①円板状エリテマトーデス
主症状としては鼻の色素脱出、脱毛、びらん(痂皮ができることはまれ)で、進行すると口唇、眼、耳介へと広がってきます。紫外線が悪化要因であるので屋外飼育の犬に見られることが多いです。症状には季節性があり、紫外線の強い夏に悪化傾向を示します。確定診断には生検が必要です。治療法としては免疫抑制剤、ビタミンEの投与、免疫抑制剤の外用が基本ですが、完治は困難です。屋外飼育の場合は屋内に移してもらう、日中は外に出さない、日焼け止めを塗るなどで症状 が軽減することもあります。また、まれにこの病変が扁平上皮癌の発生母地となるので注意が必要です。
②落葉状天疱瘡
主症状は鼻に重度の痂皮沈着、脱毛で、眼周囲、陰嚢、体幹にも広がります。フレンチブルドックでは顔に症状が出ず体幹に出ることが多いようです。治療法は基本的には①と同じです。続発性感染症の予防には注意が必要です。
③中毒性表皮壊死症
これは薬物中毒などによって表皮全層が一斉にアポトーシスを起こす病気で、急発症し急激に進行し最悪の場合急死することもあります。見た目には火傷のような病変が急激に広がっていき、表皮‐真皮接着が弱くなり皮膚がずる剥ける(二コルスキーサイン)が認められます。原因物質としては様々な抗原が考えられます。化学物質、薬剤(抗生剤、ノミ駆虫剤など)、病原体、腫瘍、食物etc。
治療法としては投薬の中止、接触物の回避、基礎疾患がある場合はその治療を行い、免疫抑制剤を投与します。壊死組織の管理が重要で、壊死組織から敗血症を起こすことがあります。重症の場合はヒト免疫グロブリン製剤の点滴治療も必要になります。
滅多にお目にかからない病気ですが、急激に進行し死に至るということから非常に怖い病気です。

8月に入り、夏も本番です。愛犬、愛猫の紫外線対策にも少し注意を払ってあげてください。
                                                        M.M.