南が丘動物通信

フェレットのインシュリノーマ 14年01月05日

インシュリノーマは中年期を過ぎたフェレットに最も一般的に認められる腫瘍性疾患の一つです。膵臓のβ細胞の過形成や腫瘍化によってインシュリンの分泌が過剰になり、低血糖を生じます。実際に臨床上認められる症状としては元気消失、慢性的衰弱、食欲不振、体重減少、異常行動(普段はおとなしいのに飼い主に噛みつく、ボーっとしているなど)などが見られます。インシュリノーマの仮診断には以下の「ウィップルの三徴」が用いられています。①低血糖に関連した症状がある(痙攣、昏睡、錯乱、頻脈、低体温、不安、過敏など)②空腹時低血糖がある(<60㎎/dl)③給餌およびグルコース投与で神経症状が軽減する。これに当てはまればインシュリノーマの可能性が高いと考えられます。確定診断をするには開腹手術による生検が必要になりますが、そこまでする体力がない場合などにはオプションの検査として血中インシュリン濃度の測定なども診断の助けになります。
インシュリノーマの治療は、まずは食事療法です。高たんぱくのフードを一日6回以上に分けて与えます。糖類は腸での吸収が早いので血糖値が急激に上昇し、これによりインシュリンの分泌が刺激されるので低血糖に陥ります。ですので、糖衣のサプリメントなども与えるのは避けた方が良いです。食事療法だけで血糖値のコントロールが出来ない場合は、肝臓での糖新生を促進するグルココルチコイドやインシュリンの分泌を抑制する働きのあるジアゾキシドの投与を開始します。
インシュリノーマは外科手術も適用となりますが、手術には熟練が必用であり、肉眼的に確認できないような微小な腫瘍が潜在していることから、根治的な治療法にはなりません。しかし、インシュリン分泌の過剰な組織を減らすことになるので症状の軽減や、内科療法でコントロールしやすくなります。また、平均生存期間も、内科療法だけの場合219日ですが、外科手術と内科療法を併用した場合462日であると報告されています。
インシュリノーマは根治の大変難しい病気ですが、早期発見と積極的な治療により幸福な余生を過ごせるはずです。
M.M.