癌を患った動物には「食欲が旺盛であっても痩せていく」という現象がみられることがあります。これは、正常の細胞より癌細胞の代謝率は高いために起こる現象です。この状態が継続すると動物は栄養失調による衰弱状態となり、この状態を癌性悪液質といいます。
では、この状態を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?まずは癌を治療をするということです。癌治療には外科療法、放射線療法、化学療法をはじめとする様々な治療法があります。癌の種類や発生部位、また動物の状態により治療方法は左右されますが、完治が不可能と判断された時には食事内容を見直す必要があります。
それでは何を食べさせたらいいのでしょう?3大栄養素には炭水化物、タンパク質、脂肪が含まれます。このうち、癌細胞は炭水化物の代謝を得意としています。とくに単糖炭水化物(ブドウ糖、果糖)を好んで代謝しエネルギーを得ています。その為、炭水化物を多量に含む食事は好ましくありません。一方、癌細胞は脂肪代謝によりエネルギーを得ることはできません。特にω3群の多不飽和脂肪酸(EPAやDHA)には抗悪液質効果や血小板凝集阻害効果があり、癌を患っている動物の食事管理に最適であると考えられています。以上のことより炭水化物を制限し、脂肪を多く含み、良質で中程度のタンパク質を加えた食事が癌性悪液質を予防するために最適な食事となります。このような目的で作られた処方食や、一般のフードでもこれに近い成分のフードが販売されています。
日に日に痩せていく動物を見る飼い主様の精神的負担は相当なものです。
栄養失調に陥りガリガリに痩せてしまった状態で亡くなるのではなく、顔が丸いまま、栄養状態がいいままで最後の時を迎えれるようサポートすることも我々獣医師の使命であると考えています。