耳には軟骨があり、その耳介軟骨膜と耳介軟骨の間、あるいは耳介軟骨内に血様の液体が貯留することで耳介が腫脹する病気です。飼い主さんは耳が腫れていることに気づき、来院されます。
犬種はレトリバー犬種やアメリカンコッカースパニエルが多く、垂れ耳や長耳などの耳の構造が要因にもなります。犬が多いですが、猫やフェレットにもみられます。基礎疾患として外耳炎があることが多く、耳を振ることで軟骨を損傷する可能性が原因として多いです。そのため外耳炎の管理も耳血腫の治療・再発予防として重要となります。外耳炎がなくとも耳血腫を発症する症例も存在し、物理的な原因だけでなく病因として軟骨の変性も考えられています。耳血腫は治療しなくとも吸収されますが、耳介の著しい瘢痕収縮が生じて美観を損なうだけでなく、それにより耳道口を閉塞させることで慢性的な外耳炎を招きます。
治療としては外科的治療(手術)、内科治療があります。外科的には切開して内容液を除去し、ドレーンなどを設置し、圧迫包帯を行ないます。短期的なグルココルチコイドは軟骨の異化作用を抑制するためトリアムシノロンの注入療法や、貯留液を減少・消失させるインターフェロンの注入療法が内科治療としてあります。内科療法でも外科療法と同等の結果であると報告もあり、瘢痕化を招きにくいインターフェロン療法が注目されています。
これから暖かくなり、耳のトラブルが多くなる季節になります。なにかお困りの際は当院にご相談ください。