知っているようで知らない泌尿器疾患
第9回それでいいの?尿路感染症の治療
宮川優一 日本獣医生命科学大学 獣医内科学教室第二 講師
泌尿器疾患について基礎から見直すこのシリーズセミナーの9回目は尿路感染症についてでした。尿路感染症は遭遇する機会の多い疾患だけに基礎から見直す良い機会になりました。
犬では細菌感染の膀胱炎が多く見られますが、これにはクッシング症候群、糖尿病、ステロイド剤の投薬などの基礎疾患や要因が背景にあります。そのため頻繁に膀胱炎を繰り返す症例では常にその原因を探しにいく必要があるということです。また細菌がいる=細菌性膀胱炎とはいえず、治療対象になるものなのか慎重な判断が求められます。
一方猫では感染による膀胱炎は尿濃縮機能低下によるものが多くなりますが、腎機能が低下する高齢猫に多いものです。若齢猫での感染は医原性が最も多く、これは獣医師が感染させないよう配慮せねばならないと感じました。
また安易に抗生剤を使用するだけでなく、動物の皮膚をきれいにするなどの対処が重要であることも確認できました。今後の診察に活かしていこうと思います。
T.S.
第12回 犬の臨床病理シリーズ 血液化学検査 内分泌編①(副腎:クッシング症候群)
小笠原 聖悟先生
米国獣医病理学専門医 アイデックスラボラトリーズ株式会社 小笠原犬猫病院
今回はクッシング症候群についてご講演頂きました。クッシング症候群は、普段の診察においてよくみる症例の1つであり、基本的には一生涯つきあっていく疾患になります。そのため診断する際には十分な検査が必要になります。
セミナーでは副腎のホルモンの働きとそれがどのようにクッシング症候群の症状として出てくるかという基本的なところから複数ある検査に関して、実際の症例からどのように診断をつけるかについてお話し頂きました。
この疾患ははじめに述べたとおり、一生涯つきあっていく病気のため、しっかりと飼い主様の協力も大切になります。今回の講演ではなぜこのような病態になるのかといったところをとても詳しく勉強させて頂きました。しっかり復習して、実際の診察においても簡潔にかつ説得力のある説明ができるようアップデートして、飼い主様にしっかり理解して頂けるよう精進したいと思います。
S.A
僧房弁閉鎖不全症とは、心臓の左心房、左心室を隔てる弁に起きる異常であり、小型犬の心臓病の大半を占める病気です。特に多いとされている犬種はキャバリアで、ほとんどの犬が老年で罹患するのに対して、この犬種では1歳で罹患する症例も珍しくありません。今回は、菅野信之先生の「基礎からしっかり学ぶ循環器疾患シリーズ」の五回目を受講し、僧房弁閉鎖不全症の診断と治療について学んでまいりましたのでご紹介させてください。
僧房弁閉鎖不全症の治療方針としては内科的治療、外科的治療の2つが考えられます。内科的治療では細かいステージ分類が定められており、各ステージによって推奨されている治療法が異なってきます。したがって、僧房弁閉鎖不全症の治療においてはこのステージ分類が大変重要です。今回の講義では、そのステージ分類の方法、そしてそれぞれのステージに合った薬剤の選択の仕方、使用方法について詳しくご教授頂きました。心臓病は、症状が出始めたときには既にかなり重症であることが多いとされています。一般的に僧房弁閉鎖不全症の予後は良好とは言えません。しかし、早期発見により上手に付き合っていける病気でもあります。僧房弁閉鎖不全症は心雑音の聴取により発見することができます。普段から定期的に健康診断にきていただき、聴診させていただくことをお勧めします。