今回は石田卓夫先生の「猫の獣医学シリーズ猫の肝臓病3」という内容のセミナーを受講しました。
今回も前回に引き続き肝臓疾患に関するものでした。
肝疾患の中で代表的なものに肝リピドーシスという疾患があります。肝リピドーシスとは肝臓の細胞内に脂肪が過剰に蓄積してしまうもので、太った猫さんが食欲不振になるときに起こりやすい病態です。脂質代謝に異常がおこると赤血球膜に影響がでて有棘赤血球とよばれる奇形赤血球が血液内に見られたりします。主な治療法としては食事療法と肝臓の再生を補助する治療になります。食事療法は大切ですが、肝リピドーシスになっている猫さんは食欲不振に加え、嘔吐が問題になってきます。しかし、薬で嘔吐を抑えつつ食事をさせる必要があり、飼い主さんには負担が大きくなります。そのため、食道チューブや胃チューブなどを設置しそこから食事を給与したりします。食事はカロリー供給のため大切なのは言うまでもありませんが、水分供給の面でも大切です。よって食欲のないうちは輸液で対応します。また、肝臓の再生を補助する治療としてウルソ酸、抗酸化作用があるビタミンE、Cの給与をおこないます。また、肝胆道系に関連する疾患で三臓器炎というものがあります。三臓器とは胆管、膵臓、小腸を指します。これらの臓器は物理的に近い位置にあり、肝胆道系疾患や炎症性腸炎、膵炎などが波及することでおこります。犬と猫では胆管膵管開口部が解剖学的に違いがあることや十二指腸内の細菌数が多いことなどが理由としてあげられます。三臓器炎になると慢性の嘔吐の原因となることがあります。
肝臓は沈黙の臓器とよばれるほどなかなか症状が現れにくい臓器ですが、それでも肝臓の主題や黄疸など見落とさなければ気づくことができる症状もあります。今後、診察時にそのようなポイントをおさえ、スムーズに診断できるよう努力していこうと思いました。
K.G
「これは癌ですか?」
身体にできた出来物に対してよく聞かれます。そのモノが癌かどうか、良性なのか悪性なのか、ひと目にして把握することは大変困難です。大切なことは針を刺して細胞を取ってきたり、切除して組織を検査センターに依頼したりする「症例の評価」です。見た目は普通そうに見えても悪性の場合もあります。代表的なものに「肥満細胞腫」があります。肥満細胞腫は急速に広がり、近くのリンパ節に転移することもあります。その際、全身のレントゲンや血液検査、超音波検査が有用となっており、TNM分類と呼ばれる転移の有無や骨浸潤具合を把握することで予後の評価にも役立たせることができます。
年2回行われる日本獣医がん学会が東京コンベンションホールにて開催されました。スペシャリストによる腫瘍に特化した講演を聞けるためいつも刺激をもらうことができる学会です。
今年のメインシンポジウムは軟部組織肉腫で、これは日常によく遭遇する腫瘍なだけに重要な講演が聞ける貴重な機会となりました。軟部組織肉腫とは診断グループにつけられた名称で、血管周皮腫、末梢神経鞘腫、脂肪肉腫などが含まれます。これらは似たような挙動を示すからグループ化された経緯があります。しかしどうも近年ではそういうわけではないようで、各腫瘍により浸潤性や転移率などが微妙に異なるため、グループとして扱うのも議論されているようです。特に発生が多い血管周皮腫と線維肉腫とでは、線維肉腫のほうがグレードも悪く再発率も高いようです。軟部組織肉腫といえばサージカルマージンは側方3cm、底部は筋膜1枚と勉強するものですが、近年ではどんどんマージンは小さくなっているようです。実測3mmで良いとの報告もありますが、これは切除して縮んだ病理組織での話なので、実際には1cm程度と判断されるようです。遭遇する機会の多い腫瘍なので最新情報にアップデートすることができました。
夏は東京、冬は大阪で開催されますが、次回の冬の学会は世界獣医がん学会と同時開催されるようで、そのアナウンスもありました。日本で開かれる国際的な学会で、世界で活躍されている著名な先生方が来日されるようで、こちらもまた貴重な機会になりそうです。
T.S.
1から始める腎臓病のはなし 第8回それでいいの? 尿石症の診断と治療
宮川優一 日本獣医生命科学大学 獣医内科学教室第二 講師
腎・