南が丘動物通信

6月28日葉月会 循環器学シリーズセミナー 19年06月28日

ここまでは知ってほしい先天性心疾患診断と治療

菅野 信之先生 日本大学獣医内科学研究室 動物病院循環器科

 動脈管開存症をはじめとした先天性心疾患についてご講演頂きました。

 先天性心疾患といっても子犬のころから症状が出ているこは、そもそもブリーダーさんが商品として扱わない事もあるので、はじめの健康診断で見つかると言うことは少ないように思います。しかしながら年齢を経て重篤したり、僧帽弁閉鎖不全症などの他の病気の心臓エコー検査のときに偶発的に見つかった場合、心臓に対する負荷や血流の動態を把握し、治療を行うに当たって重要なファクターとなり得ます。

 今回は複数の先天性心疾患に関して、心臓エコーで描出した際の見え方、内科的・外科的治療の方法に関して画像や動画を用いて詳しく説明頂きました。また、それぞれの疾患に対して外科的治療を行う際の適応不適応のの判断基準について勉強させて頂きました。

 心臓のエコー検査をする際にはあるかもということを念頭おき、あった際にはどのような状態なのかしっかり判断できるように復習し、日々の診察に役立てていこうと思います。

S.A

6/23 日本小動物歯科研究会 レベル1認定講習会・実習 19年06月28日

倉田 大樹先生 ワールド動物病院

先日日本小動物歯科学研究会の講義、実習に参加してまいりました。倉田先生から歯科学の基礎を講義していただきました。わんちゃんのスケーリングと抜歯はもっとも頻繁に行う処置の一つです。そこでわんちゃんの歯を解剖から勉強しなおし、口腔内のどの部分に歯石が付きやすいのか、歯周病の原因とどのように根尖膿瘍へと悪化していくのかを勉強しました。講義の中で倉田先生の症例も紹介していただきながら、歯科処置のコツ・疾病ごとに行うべき処置の違いと鑑別すべき点を教えていただきました。実習ではスケーリングの練習と口腔内レントゲン撮影の練習をしました。

当院では以前からスケーリングの処置は必ず麻酔下でルートプレイニングも含めてさせていただいております。これはわんちゃんの歯はエナメル質が薄く、精度の低い処置はエナメル質の破壊を招き、歯周病を悪化させる危険性をもっているため、歯肉内の歯石除去(ルートプレイニング)が歯石の再付着の予防および歯周病の治療には必要なため、なにより安全に処置を行うためです。講義でもこれらは極めて重要なこととして挙げられていました。飼い主様にもきちんと伝わるようインフォームしていきたいと思います。また当院は口腔内レントゲンが備わっています。飼い主様に今後見える形で歯科処置の根拠提示ができるようにしていきたいと思います。

K.Y

6/24 葉月会 内分泌セミナー 19年06月24日

今回は米国小動物内科専門医の宮本 陽子先生の「糖尿病 犬と猫のDKAどうする」という内容のセミナーを受講しました

今回は糖尿病の診断治療についての考え方の講座でした。糖尿病には膵臓のβ細胞がインスリンを分泌できない絶対的インスリン不全と、インスリン受容体に作用して細胞がインスリンに反応できない相対的インスリン不全があります。絶対的インスリン不全はⅠ型糖尿病と呼ばれ、犬に多く、原因は遺伝的で自己免疫疾患が関与していると言われています。相対的インスリン不全はⅡ型糖尿病と呼ばれ、猫に多く、原因は生活習慣にかかわっていることが多く、寛解することもあれば再発することもあります。

糖尿病の犬の70%が合併症を併発すると言われており、急性膵炎や細菌性尿路感染症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)を併発します。

クッシング症候群であると糖尿病のリスクも上昇すると言われており、健康診断や腹部エコーで気になる所見があればクッシング症候群の検査が重要になってきます。

犬の糖尿病において飼い主様が知っておくべきことは、毎日2回皮下注射が必要なこと、家を簡単に空けられないこと、一生治らないこと、合併症があること(クッシング、白内障、尿路感染症) 血液検査を繰り返し、インスリン耐性がないかや的確な量を見つけなくてはいけないこと等があります。

猫における糖尿病の合併症は肝リピドーシスや胆管炎、慢性腎臓病、急性膵炎、細菌性・ウイルス性疾患、癌などや末端巨大症などがあります

末端巨大症(アクロメガリー)は糖尿病の猫の25%が併発すると言われています。アクロメガリーは機能性の下垂体腺腫が負のフィードバックがかかわらず成長ホルモンを分泌し、成長ホルモンは様々なインスリン様成長因子の産生を刺激することでインスリンの抵抗性に関わります。アクロメガリーの特徴は体重増加と四肢の巨大化、下顎の突出などがあります。治療法としては外科的に経蝶形骨洞脳下垂体除去かもしくは手術不可能な場合には放射線治療が適応になります。

今回のセミナーでは糖尿病の基礎的な診断方法から、糖尿病を患った子の飼い主様にお話しすべき注意点、注意すべき併発疾患まで深く教えていただきました。教えていただいたことを生かして、次に糖尿病の子を診察するときには併発疾患を見逃さず、注意事項をしっかり説明できるように理解を深めていきます。

Y.N

6/21 志学会セミナー 19年06月15日

当院では、患者様の症状に最適な治療を受けていただくべく、一流の病院を紹介させていただくことに取り組んでおり、その一環として放射線治療においては大阪府立大学 獣医臨床センター 様をご紹介させていただいております。今回は、大阪府立大放射線科の准教授である野口 俊介先生による放射線治療をテーマにしたお話をご紹介させていただきます。放射線療法とは、外科的手術、薬物治療と並ぶ癌の治療法のひとつです。人の医療においても広く用いられているため、名前を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。当院にも、癌を患ったわんちゃん・ねこちゃんが多数来院され、日々治療を行っています。しかし、放射線治療を実施するためには特別な装置が必要で、限られた場所でしか治療を 受けることができません。大阪府立大は放射線治療を行うことができる施設のひとつです。

放射線治療とは、目に見えない放射線を使って腫瘍細胞を死滅させたり、痛みを和らげたりする治療法です。得意とするのは肥満細胞腫・鼻腔内腫瘍・メラノーマといった腫瘍になります。基本的には消化管腫瘍以外は全て適用できすが、中でも猫の鼻腔内リンパ腫は、放射線治療のみが唯一根治可能であると言われています。放射線治療が奏功した場合、生存期間が大幅に延びる可能性あります。放射線治療は、外科的手術や化学療法などと併用することもあり、長期戦になる場合もありますが、かわいいわんちゃん・猫ちゃんたちが一日でも長生きできるようしっかりサポートさせていただきます。大切な家族が癌だと診断されたら、ぜひご相談ください。たくさんの選択肢のなかから最適な治療法をご提示できるよう、日々情報収集に努めたいと思います。S.K