南が丘動物通信

1月27日 アニマル気管虚脱専用メタリックステント認定医トレーニング 19年01月31日

田中 綾先生 東京農工大学農学部獣医学科獣医外科学研究室 准教授

上村 暁子先生 帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科 講師

気管虚脱は犬でよくみられる気道閉塞の原因で慢性の発咳、呼吸困難、チアノーゼといった症状がでます。

治療はまず内科的管理によって行ないます。多くの子は鎮咳薬、気管支拡張薬等で維持できますが、中には内科療法に反応しない子もいます。 外科的治療はそういった症状の重篤な子が適応となり、方法は気管外からの支持する方法と気管内へのステント挿入に大きく分かれます。

今回M.I.Tech社のFAUNA STENTの実習に参加しました。特殊な編み方がされたメタリックステントで従来のものの課題を克服できる可能性があります。挿入方法も実習させていただき、今後の診療に活用していきたいと思います。気になる方はぜひご質問ください。K.Y

1月31日葉月会 循環器学セミナー 「心エコー図検査 基礎と応用」 19年01月31日

今回は葉月会主催の循環器学セミナー「心エコー図検査 基礎と応用」日本大学 菅野 信之先生のセミナーに参加してきました。

心臓の超音波検査(以下 心エコー)は生体に大きな危害を加えることなく、かつリアルタイムな情報を瞬時に得て、なお分析することができる有用な診断ツールです。

今回は、これから心エコーを始める人のために解剖やプローブの当て方などの基礎知識を教えていただきました。

心エコー検査で特に大事となってくるのは、心臓を4つの部屋に分類したうちの「左心房」と呼ばれる部屋の評価です。

多くの症例において左心房拡大が認められ、これは心疾患の予後として十分に評価されます。

評価の方法は左心房の大きさ(LA)と大動脈の大きさ(Ao)の比率で判定することができます。(LA/Ao>1.6で心房拡大)

この左房拡大を起こす疾患は以下のように様々であり、一概に診断することは難しいため、鑑別診断として心エコーを積極的に用いることは今後の治療方針を定める上においても有用だと思いました。

H.F

先天性:心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存症、僧帽弁異形成

後天性:心筋症(HCMなど)、僧帽弁狭窄・閉鎖不全症、

不整脈:洞停止、房室ブロック、心房細動 etc.

1月26, 27日 第20回日本獣医がん学会 19年01月26日

 年2回開催される日本獣医がん学会、毎年冬は大阪で行われます。今年のメインシンポジウムは遭遇する機会の多い肥満細胞腫についてでした。

 肥満細胞腫とは皮膚に発生する悪性の腫瘍で、その細胞的な特徴と悪性腫瘍としての挙動の悪さから多くの研究がなされている腫瘍です。多くの症例は外科的切除で根治可能なことが多いですが、ごく最近の研究では触知できない正常サイズの所属リンパ節にも、組織学的に転移が半数は成立していると報告されており、大きさに関わらずリンパ節も摘出する必要性を感じました。化学療法についての講義では、肥満細胞腫に対する抗癌剤の変遷から解説していただきとても面白い講義でした。化学療法はあまり感受性の高い治療法とはいえず、分子標的薬もまだまだ検討の余地があるとのことなので、さらに最新の情報を求めていきたいと思います。

T.S.

1月19日葉月会 腫瘍外科セミナー 「口腔内腫瘍の外科」 19年01月19日

口腔内腫瘍 上顎骨切除手術

廉澤 剛先生

酪農学園大学 獣医臨床腫瘍学研究室

口腔内の腫瘍は悪性黒色腫や扁平上皮癌など悪性度の高い腫瘍と、良性の腫瘍が半々くらいで存在します。悪性のものに関しては、手術をしても再発や転移をし、結局長くは生きられない患者さんはほとんどです。しかしながらそうといってそのまま放置してしまうと、顔貌が変化し眼球が飛び出してきたり、出血・呼吸困難などみているだけでつらい、という状況になることが多いのも事実です。そこから、動物のQOLを維持するための手術というものが選択肢の一つとして挙げられます。今回はとくに上顎の腫瘍に対して、発生場所によってどこをランドマークにして手術をしていくか、また手術時のポイントに関して画像、動画を用いての解説をして頂きました。

上顎の腫瘤はある程度大きくなってしまってから気づかれる方も多く、その場合にどうなっていく可能性があるか、選択してしてはどのようにしていくか、しっかりとしたインフォームドコンセントをしていけたらと思います。

S.A

ASC School ながたの皮膚科塾 第4回 内分泌の関与する皮膚疾患 19年01月18日

人間と同じように高齢化したペット社会で、腫瘍の次によく見つかる病気として内分泌疾患があります。内分泌疾患とは、甲状腺、下垂体、副腎、卵巣、精巣といった内分泌腺の病気です。内分泌腺とは、「ホルモン」という生体内の恒常性の維持に関わる微量物質を合成・分泌している器官ですので、その異常は代謝に影響を与えてしまいます。

4回目となる皮膚科のセミナーでは、内分泌が関与する皮膚疾患について学んでまいりました。内分泌疾患によって代謝異常を起こしている動物には、体調や飲食、排せつなどの日常生活においてさまざまな変化が現れます。行動や性格が変わってしまう子もいるようです。皮膚においては主に脱毛が認められます。そういった変化は年と共に徐々に現れてくるため、「年だから・・・」と見過ごしてしまいがちですが、その裏では少しずつ内分泌疾患が進行している可能性があります。高齢の犬で最も多く見られる内分泌疾患は、「甲状腺機能低下症」です。対して、「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」は、それほど数は多くないものの、進行すれば死に至る病気です。避妊・去勢手術を済ませていない犬では、「性ホルモン異常」を起こす可能性が高くなります。これらの内分泌腺は、視床下部―下垂体前葉を通してフィードバックで繋がっているため、併発することもあります。いずれの内分泌疾患も、治療方法が存在します。愛犬の毛が年と共に薄くなってきたら、年齢のせいと決めつけてしまうことなく、ホルモンの検査をおすすめいたします。S.K





日本獣医麻酔外科・循環器秋季合同学会 19年01月13日

1月12~13日に仙台国際センターにて第97回日本獣医麻酔外科・第109回日本獣医循環器学会が開催されました。

今回のテーマは手術のための準備と対策ということで様々な分野のスペシャリストが集まり、討論されていました。

日々の診察にもよく遭遇する上部気道疾患の症例における麻酔の危険性について再確認できました。

犬の上部気道疾患のうち、フレンチブルドッグやパグなどの短頭種による短頭種気道症候群や喉頭麻痺、気管虚脱が多い疾患とされている。これらは症状として現れ始める頃には重症化していることが多く、麻酔をかける際に口腔内を覗くと伸展した軟口蓋や喉頭周囲の腫れなどにより「気道確保」が困難な場合があるため、非常に注意しなければならない。

鼻をフガフガと鳴らしたり、ガーガーとガチョウのような呼吸音が目立つようになってきたら要注意です。もしかしたら呼吸がしづらくなってしまっている可能性があります。手術が必要な場合もありますので、お気軽にご相談ください。

H.F