9月22日 葉月会 外科セミナー
演者 酪農学園大学 廉澤 剛
犬における肥満細胞腫は皮膚腫瘍の2割を占めると言われており、予後も様々である。肥満細胞腫とは生理活性物質であるヒスタミンの過剰分泌と言われており、皮膚でおきると蕁麻疹、気道でくしゃみや鼻水、消化管では下痢嘔吐、全身性に蔓延すると循環不全を引き起こすとされている。そもそも肥満細胞は皮膚や粘膜に存在する細胞であり、生体防御としての炎症や免疫反応を担っている。その肥満細胞から放出されるヒスタミンの濃度を測定することで予後の判定に優位であるという報告がある。
① 血漿ヒスタミン濃度(PHC)が1.0ng/ml以上を示す場合、肥満細胞腫の可能性あり
② PHC>1.0ng/mlは6ヶ月生存率は42%
③ PHC>1.5ng/mlは6ヶ月生存率は25%
肥満細胞腫はその見た目から単純なイボやできものと勘違いされやすく、腫瘍の中では悪性の率も高いため、積極的に細胞診断および血漿ヒスタミン濃度の測定により早期発見に繋がると思われます。
H.F
Dr. Janetが教える軟部外科
Dr. Janet McClaran
Head of Surgery, London Veterinary Specialists
DVM, DACVS, DECVS, MRCVS
ACVS Founding Fellow, Minimally Invasive Small Animal Surgery
北米小動物外科専門医であり、現在はLondon Veterinary Specialistsの外科トップとして働かれておられるJanet先生の講義を受けてきました。特に講師が得意としている、最小侵襲外科についての最新情報を得る良い機会となりました。人では腹腔鏡や胸腔鏡、関節鏡などの内視鏡を用いた検査や手術が幅広く行われており、近年では獣医領域でもその適応が広がってきております。
腹腔鏡外科で注目されている手技が胆のう摘出術です。症例の選択がまず難しいポイントになりますが、腹腔鏡でも良好な結果が得られています。日本の獣医師が発表した、胆のう摘出についての発表がアメリカでも高い評価を得られているそうです。胆のう摘出は難易度の高い手技のため、かなり高度な技術が求められます。
経皮的膀胱結石摘出術では、膀胱に硬性鏡を挿入し鉗子で結石を摘出する方法です。尿道カテーテルからのフラッシュと併用することで膀胱三角部の結石の取り残しを防ぐことができ、処置時間も1時間程度と負担の少ない手技になっています。
当院でも腹腔鏡検査や手術を実施していますが、このような講義を受けることで知識や技術をアップデートしてさらに研鑽を重ねていきたいと思っております。
T.S.