乳腺腫瘍の外科
酪農学園大学 獣医臨床腫瘍学研究室 廉澤剛先生
犬の乳腺腫瘍は雌犬の腫瘍の半分を占め、猫でも3番目に多い腫瘍でありとても発生の多い腫瘍です。それだけに様々な知見もあり、今回は腫瘍外科の第一人者である廉澤先生から今までの研究のまとめ、そして最新のデータについて講義を受けました。
乳腺腫瘍は手術よりも前に良性・悪性の診断をつけることがとても難しい腫瘍です。いままでも多くの研究がなされましたが、現在でもはっきりとした成果はなく、そのためどの範囲で腫瘍を摘出するべきなのか判断に迷います。しかし小さい範囲で手術した場合には58%で再発するという報告もあるために、やはり最初からできるだけ広範囲で切除したほうがいいのかもしれません。 猫の乳腺腫瘍は90%は悪性で高確率で転移が発生します。そのため最初から広範囲での手術が推奨されます。
乳腺腫瘍は早期の避妊手術により発生を大きく減らすことができます。なによりも予防が大事ですので、啓蒙を広げていこうと思います。
T.S.
ラプロスについて
共立製薬
猫ちゃんの慢性腎臓病の新しい治療薬として発売されたラプロス®についてお話を伺ってきました。成分のベラプロストナトリウムはヒトで肺高血圧症の治療薬として長く用いられている薬で、今年新たに動物用医薬品として初めて「腎機能低下の抑制」が効果・効能で認められました。猫ちゃんの腎臓病は、腎臓で起こっている炎症や繊維化による血管収縮が負のスパイラルを起こし進行していきます。ラプロス®の作用にはその炎症の抑制作用や、血管拡張作用などがあり、複数の面から腎臓病の進行を抑制するそうです。また、この血管拡張作用によって消化器系の血流もいっしょに増進され、猫ちゃんの食欲不振を改善する効果も報告されています。無味無臭で小さな錠剤(直径6mm)で比較的飲ませやすい錠剤であることも、治療を続けていく猫ちゃんにとって、飼い主さんにとって、メリットのひとつですね。高齢の猫ちゃんとは切っても切れない関係の慢性腎臓病の治療に、新たな選択肢が増えたことはとても喜ばしいことです。
M.K.