敗血症の診断と治療戦略
講師 ： 米国獣医救急集中治療専門医 上田 悠 先生
本日はアメリカの専門医の先生の講義でした。敗血症の定義としてのSIRS（全身性炎症反応症候群）から丁寧に教えていただきました。犬、猫におけるSIRSの基準は以下のとおりです。
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パラメーター |
犬 |
猫 |
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心拍数（回 / 分） |
>120 |
<140または>225 |
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呼吸数（回 / 分） |
>20（もしくは>40） |
>40 |
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体温（℃） |
<38.1または>39.2 |
<37.8または>40 |
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白血球数（× 103 / μl） |
<6または>16 |
>19または<5 |
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上記のうち２つ以上を満たす |
上記のうち3つ以上を満たす |
ですが、この定義に則った場合集中治療の必要のない症例も多く拾ってしまい、死亡率が10％のものと50％以上のものをひとくくりにしてしまうという問題点があります。
そこで、今年の2月に人医療では死亡予測（率）に重点を置いて臓器障害の有無に注目したqSOFAという 敗血症の新定義が発表されました。qSOFAは呼吸数の低下、精神状態の変化、血圧低下をパラメーターとします。しかし、動物では血圧の測定や精神状態の評価が難しいためqSOFAが獣医療で有用かどうかは懐疑的なようでまだSIRSの方が有用なようです...。
敗血症の診断においてCRPの有用性はよく知られていますが、バイオマーカーとしてプロカルシトニン（PCT)が有用なようです。PCTは甲状腺C細胞で産生される、カルシトニンの前駆物質ですが、正常では代謝によりカルシトニンとして分泌されますが、重度感染症では甲状腺外でPCT産生し（全身が内分泌組織として働く？）、血中に分泌されます。PCTは発症後2時間から6時間で優位に上昇します。CRPの上昇は6～24時間後になるのでより早期の診断が可能になります。
敗血症はより早期（6時間以内）の感染巣のコントロールが動物の生死にかかわります。私たちも１匹でも多くの命が救えるよう迅速な診断・治療を心がけます。
M.M.
公益財団法人 日本小動物医療センター 画像診断科 戸島篤史先生
今回は各々の臓器において抑えるべきポイント、病気の鑑別等に対する講義でした。特に肝臓の腫瘤性病変の鑑別では結節性過形成、肝細胞ガン、胆管癌の鑑別が大変わかりやすく、エコー上の外観と細胞診を組み合わせることで、病理検査に出す前により正確な診断ができることを平易な言葉で説明していただき理解が深まりました。また、胆嚢粘液腺腫においても見た目だけでなく、probeで押した時の胆嚢、粘液の可動性、形状等でも進行具合がわかること、摘出手術の時期の基準等詳しく話していただきとても勉強になりました。今後の診察にも生かしていければと思います。
K.S
今回は北摂ベッツセンターのVet Derm Osakaの症例報告会と岩崎先生のアポキルのアップデートの話を伺いました。
皮膚病には様々な要因がからみあい、一般の動物病院では対応が難しい皮膚病もたくさんあります。Vet Derm Osakaでは東京農工大学 名誉教授・農学博士の岩崎先生が二次的な皮膚科診療をして下さり、多くの難治症例が紹介をうけています。
症例報告ではVet Derm Osakaの研修医の先生が日々の診療でよく見る症例や減感作療法の成績等の報告を伺いました。研修医の先生の中に以前当病院で勤められていた西野先生もいらっしゃり、元気そうにしておられました。報告には薬に対する過敏反応の症例、減感作療法を行った４症例、落葉状天疱創皮膚の採材のコツ、紹介されてくる膿皮症の難治となる原因、肉芽腫性脂腺炎などがありました。
最後に岩崎先生が新しいアレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎の治療薬であるアポキルを実際に使用した症例のデータをまとめ、新しい情報をおしえていただきました。減薬をした際に多くの症例で痒みがぶり返すが、１ヶ月ほどすると減薬後の用量でも痒みがコントロールできることが多いということを教えていただき、飼い主様にきちんとインフォームすることが大事と伺いました。今回得られた最新の情報をよりよい治療に生かしていきたいと思います。K.Y
第三回 グリーフコミュニケーションとハッピーライフ
獣医師 グリーフケアアドバイザー 阿部美奈子先生
今回はオーナーさんの不安な気持ちを取り除く心遣いについて学びました。
例えば、薬が飲ませられなかった等のオーナーさんの不安な気持ち、失った自信を、私たち獣医師、看護師が、最初に否定から入るのではなく、オーナーさん不安に耳を傾け、できるように一緒に考えていくことであることが大事であるというものです。動物病院がペットの病気を治す場所だけではなく、オーナーさんと二人三脚で大事な家族を治していく場でなければならないと痛感しました。今日学んだことを普段の診察でも生かしていきたいと思いました。
K.S