南が丘動物通信

5月26日 心臓エコー研修 16年05月27日

日常診療に不可欠な心エコー基本断面の出し方~パート2

宮崎大学 萩尾光美先生

2回は、右側傍胸骨短軸断面および頭側傍胸骨短軸断面の出し方をメインに学びました。

右側傍胸骨短軸断面では、腱索レベルにおけるMモードを利用した左室内径短縮率(FS)の評価や、大動脈弁レベルにおけるLA/Ao(左房の大きさについて)や心室中隔欠損の有無の評価などが可能となります。頭側傍胸骨短軸断面ではフィラリア虫体の有無、肺動脈弁とその周辺の評価、動脈管開存症の有無の評価などができます。

MモードやLA/Aoの評価のための計測では、描出している断面や計測時の時相の違いによって測定結果に誤差がでるため、今回のセミナーで学んだことを復習し、より正確な描出、計測がルーチンでできるようにしていきます。

H.B.

5月27日 葉月会 循環器セミナー 竹村先生 16年05月27日

第7回心エコー図検査:基本断層像の描出法と観察ポイント

竹村直行先生

日本獣医生命科学大学 臨床獣医学部門治療学分野1

今回は心エコー図検査の特性とその基本的な方法を一から復習する講義でした。

心エコー図検査の意義は大きく分けると二つあります。まず心室や心房の大きさや壁の厚さ、壁の動き、弁の形態、心筋や弁膜の形の異常を発見する形態的な評価を行うことで、心臓の動いている状態をそのまま観察できます。もう一つは血流を見る機能的な評価です。カラードップラー法を行なうと、心臓の中の血液の流れを映し出すことができ、弁の異常や壁に穴があいているかどうかなどの異常を発見できます。

しかしながら、その動いているものを評価できるという長所は同時に測定誤差も生み出します。また動物たちの脱水の状況や鎮静剤を使用した場合には結果に大きく影響を及ぼします。術者はその特性をきちんと理解し、診断に役立てていかなければなりません。今回の講義ではその誤差の現れ方、数値の理解の仕方、飼い主様への説明のし方を丁寧に教えていただきました。また基本的な心エコー図検査時の補ていのし方やプローブの当て方なども写真や動画でわかりやすく教えていただきました。K.Y

5月21日 葉月会腫瘍科セミナー 16年05月21日

手術ビデオを用いた外科セミナー

断脚術及び義肢の応用

酪農学園大学獣医臨床腫瘍学教室 廉澤 剛 先生

今回のセミナーでは、断脚術について講義して頂きました。断脚術の目的は四肢に悪性腫瘍が生じた場合や壊死をおこしてしまった場合、整復不能な複雑骨折をおこした場合などに根治的な治療として、あるいは緩和的な効果を期待して実施されます。四肢の骨にできる悪性の腫瘍としては骨肉腫や、軟骨肉腫、軟部組織に出来る腫瘍には滑膜肉腫などが挙げられますが、この中でも多いのが骨肉腫です。骨肉腫は肘から遠く膝に近い骨に好発し、非常に悪性度が高く肺への転移が頻繁に見られる病気です。さらに骨肉腫により骨溶解が進行すると激しい痛みを伴います。そのため例え転移があり余命がわずかであっても痛みから解放してあげることを目的として断脚術が実施されることがあります。飼い主様からすると断脚なんてかわいそうと考えられる方もいらっしゃるかと思いますが、こういった意味合いでも断脚術は有効な治療法の一つといえます。今回のセミナーでは断脚術に関連する筋肉の解剖学的位置や血管、神経の走行について学び、さらには実際の断脚術の動画を交えて講義して頂きました。また断脚後に義肢を装着した症例の紹介もあり、今後こういった動物のための義肢の開発が進むことで、断脚後もより快適な歩行が可能となり動物達のQOLの向上が期待されるのではないかと思いました。

Y.I.

5月20日 志学会セミナー 16年05月20日

犬の僧帽弁閉鎖不全症

大阪府立大学獣医臨床センター 島村俊介先生

 犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、犬の循環器疾患の8割を占めており、発症すると外科手術以外完治することのない病気です。内科治療では薬等の服用によって症状の進行を抑え、QOLを高めていくことを目標とします。僧帽弁は左心房と左心室の間の弁であり、MRではこの弁の機能不全によって左心室から左心房への逆流、さらには血流の鬱滞によって肺高血圧、肺水腫へと進行していきます。

今回のセミナーでは心臓の解剖からMRの成因、症状による分類、臨床検査といった基礎を再確認するとともに、最新の知見を交えて講義していただきました。特に肺高血圧症の発生がMRに罹患した犬の予後に強い関連を示していることから、肺高血圧症、肺水腫の良好なコントロールが治療のKeyになることが示されました。プロスタサイクリン誘導体、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬のような血管拡張薬の他に、抗がん剤であるイマチニブが、低用量では血管平滑筋細胞に作用し、肺血管リモデリングを抑制することで肺高血圧症に有用であるという報告もあり治療の幅を広げられるようにこれからも勉強していきたいと思います。

S.K