心電図検査(心電図波形の成り立ちと心拡大の評価法)
竹村直行先生
日本獣医生命科学大学 臨床獣医学部門治療学分野1
今回は日常的に行う心電図検査について基本から見直す講義でした。竹村先生の講義はいつも分かりやすく、ビジュアル的に理解することができました。
心電図は主に不整脈を検出するための検査ですが、そのためには心臓の刺戟伝導系から理解しなければなりません。心臓はペースメーカーから発された自発的な信号をスタートとして、刺激が心臓全体にいきわたるのですが、これによる心筋の興奮を検出するのが心電図です。体に配置されたいくつかの電極が、その方向と大きさを検出するのです。主にⅡ誘導と言われる、一般的に用いられる誘導法がありますが、それだけでなく、複合的にすべての誘導法を利用して不整脈を検出するべきという先生のお話に、その重要性を再認識させられました。
不整脈が重症化すると失神したり肺水腫を引き起こしたりするために、早期に正しく発見して不整脈の治療を行いたいものです。異常な心電図の理解のためにはまず正常な波形の理解が不可欠で、基本を今回のセミナーで確認することができました。次回は異常な心電図、つまり不整脈についてのセミナーがあるようなのでしっかり復習しようと思います。
T.S.
2月19日~21日に開催された第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会に参加してまいりました。
本大会では基礎的な分野から最先端の情報まで幅広い講演があり、とても勉強になりました。特に消化器疾患における食事に関しては大腸性と小腸性の症状の違いからどういった食事が必要なのかを丁寧に説明してもらい、今後の食事選択の参考になりました。また、眼科学ではレスポンスシステムを用いたクイズ形式の講義で楽しみながら知識を広げることが出来ました。
今回勉強した知識を今後の診療に活かしていきたいと思います。
D.T
新大阪で開催された日本獣医再生医療学会に参加してきました。今年は去年よりも参加人数もかなり増えて活気のある大会でした。
再生医療とは、患者自身の細胞・組織または他者の細胞・組織を培養等加工したものを用いて、失われた組織や臓器を修復・再生する医療です。
幹細胞は大きく分けて多能性幹細胞(生体内には存在しない、人工的に作られほぼすべての組織・細胞に分化することができる細胞;ES細胞やiPS細胞)と体性幹細胞(体の組織の中に存在しておりある程度の多分化能を持つ細胞;骨髄幹細胞や造血幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)に分けられます。
山中教授のノーベル賞受賞もあり、iPS細胞の可能性や再生医療にも大きな注目がされていますが、現在、実際に臨床現場で行われている再生医療の主流は体性幹細胞を用いたものです。
心筋シートなどの細胞工学から、間葉系幹細胞療法やリンパ球療法などの免疫療法などなど。人では臓器移植時の免疫反応を抑えるために間葉系幹細胞製剤が保険適用され、現在治験が行われています。
獣医療でも再生医療は普及しつつあり、主に使われているのは、脂肪由来間葉系幹細胞療法とリンパ球療法です。獣医再生医療はまだ新しい医療であり、手探りの部分もある段階です。再生医療は万能薬ではありません。再生医療を行うにあたっての注意点、細胞を扱う際の品質管理など、基本に戻っていかに安全に再生医療という薬を提供していくかということに関しても多くのお話がありました。
症例発表では、難治性の角膜潰瘍や皮膚潰瘍、骨折の治療に非常に有効だと感じました。適材適所でこうした治療を提供できるよう日々努力していきたいと改めて感じました。
M.M.
特別講演「泌尿器腫瘍におけるInterventional oncology」
Chick Weisse先生 ACVS専門医 NY州NY市アニマル・メディカル・センター
インターベンショナル・ラジオロジー(IR:Interventional Radiology)は透視装置や超音波装置など現在の画像技術を用いて血管やその他の構造物に選択的にアクセスし、治療目的で様々な物質を送達する手技です。獣医療におけるIR手技の研究や臨床応用は、特に尿路を中心に広がりを見せています。午前中の講演では順行性尿道カテーテル挿入法、経皮的膀胱瘻チューブ設置術、腫瘍性閉塞性病変に対する緩和的尿道ステント術などについて、各症例の写真や透視撮影した動画を用いて、尿路を確保するためにどのような手技でIRを実施したかを具体的に説明いただきました。午後の講演では、動脈内注入化学療法についてお話いただきました。化学療法剤の全身投与量を腫瘍の栄養動脈内に最小侵襲的に直接投与すれば、腫瘍内薬剤濃度が上昇して抗腫瘍効果が高まると考えられます。泌尿生殖器系の代表的な悪性腫瘍である移行上皮癌や前立腺癌では、現在化学療法や放射線療法、そして外科的減容積術が行われておりますが、いずれも確実な持続的奏功を得ることが難しく、より効果的で低侵襲な局所腫瘍管理法が求められております。今回講義いただいたIRを用いた手技をそうした局所腫瘍管理法の選択肢のひとつとして日々の診察に活かせるように考えてゆきたいと思います。
H.B.