南が丘動物通信

唾液の分泌過多と神経症状 23年04月05日

唾液の分泌過多(流涎)は、主に口腔内疾患(腫瘍、歯周病、潰瘍など)、咽頭喉頭疾患、食道疾患(運動機能低下、閉塞性、食道炎など)、唾液腺疾患(唾液腺壊死、唾液腺嚢胞、唾液瘤、唾石)、神経疾患(ナルコレプシー、カタプレキシー、頭蓋内疾患、てんかん発作、重症筋無力症)など様々な要因から発症します。動物たちは喋ることができないため、これらの疾患を除外して調べていく必要があります。多くの場合は口腔内や唾液腺の問題であることが多いですが、今回は、この症状と神経系の関連をお話しします。

 フェノバルビタール反応性唾液腺症という疾患名をご存じでしょうか?当疾患は、人と犬で報告されていて、今のところ病態が明らかになっていない疾患です。症状は、食欲不振、流涎、悪心、吐出、嘔吐、ゲップ、必発ではないが両側性の唾液腺腫脹が認められることもあり、一般的な制吐剤や抗菌薬、胃粘膜保護薬にも反応しないが、抗てんかん薬であるフェノバルビタールを投与することで症状が改善することが判明しています。このことと、過去の報告では、一部の症例において、脳波でてんかん発作様波形が見られたことから、唾液の分泌の調節を担っている箇所の一部である"大脳辺縁系"における「焦点性てんかん発作」の型の一部あるいはそれに関連があると言われています。また、末梢自律神経性機能不全も疑われています。このように本疾患はフェノバルビタールの投与によって症状が改善するというシンプルなものであるが、「脳神経」というものの複雑性により病態が明らかに解明されていない疾患であります。まずは気持ち悪い、吐き気、口が痛いなどの症状を引き起こす原因疾患を除外した上で、内服の投与を検討すべきだと思われます。

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