胃幽門部の外科手術ーこの症例に外科介入は必要か否か?ー
大阪府立大学 秋吉 秀保先生
今回は秋吉先生の「胃幽門部の外科手術」という内容のセミナーを受講しました。
胃の疾患の中には内科的な治療では完治せず、外科的な治療が必要なものがあります。今回はその中でも胃の幽門という部位に焦点をあてた内容でした。症例は頻繁ではないが嘔吐を繰り返すことを主訴に来院したワンちゃんで胃潰瘍の原因となる内服等は服用していない、やや高齢のチワワさんでした。鑑別診断としては腫瘍(腺癌、平滑筋腫、リンパ腫、GIST、平滑筋肉腫など)、炎症(好酸球性、肉芽腫性など)、良性の幽門筋肥大、幽門前庭部の粘膜肥大などが挙げられます。検査として有用なのはEcho検査で、この症例では粘膜層の全周性の肥大が疑われました。
幽門狭窄症には幽門筋肥大によるものと、粘膜が肥大するものがあります。幽門筋肥大は若齢の犬、短頭種の猫に多いといわれ特にシャム猫で多いと言われています。胃前庭部粘膜肥大は高齢の小型犬で発生が多く、粘膜が非腫瘍性に肥大し前庭部がヒダ状、ポリープ状を呈する疾患です。
この症例では内視鏡で生検を行いましたが、病理診断では粘膜の過形成でした。治療法としては幽門部の肥大を改善しなければならないため、手術で胃の内腔を大きくし肥大部を切除する方法が複数あり、重症度に応じて手術法を選択します。
今後、今回のセミナーで得た知識を治療に活かし内科的な治療だけでなく、必要ならば外科的な治療すすめられるよう一層努力しようと思います。