人も犬も猫も、口腔内にできるデキモノ・腫瘤は注意が必要なものが多く存在します。小型犬では悪性黒色腫(メラノーマ)の発生が多く挙動も悪いです。そして猫では扁平上皮癌という悪性腫瘍が多く発生します。
扁平上皮癌は主に歯肉や舌にできる癌です。遠隔転移は少ないですが、とにかく痛くて多くは潰瘍を伴うために猫は痛みで食欲が落ち痩せてだんだん弱り死に至ります。悪臭のあるよだれが増えて口の周りが汚くなり、また口を使うのを嫌がるために毛繕いが減り被毛がガサガサで汚くなります。まれに顎の骨が原発の扁平上皮癌もあり、その場合は顎の骨が大きく腫れあがります。
口腔内癌の治療は難しく、腫瘍が小さいうちは切除が対象になりますが、これは顎の骨ごと腫瘍を摘出しなければならず大きな手術になります。近年では小さい癌であれば外科的摘出で予後が良いとの報告も出ています。しかし巨大な腫瘍の場合は摘出は難しく、チューブでの食事管理や痛みの緩和など対症療法にならざるを得ない症例も多いのが現実です。有効な抗がん剤はありません。また高齢で発見されるケースがほとんどのために慢性腎不全などの他の病気の管理も必要になります。
動物の口腔内の腫瘍は概して発見が遅くなるために、見つけたころにはかなり巨大あるいは進行した状態のことがほとんどです。それはまず口の中をよく見せてくれないということに尽きます。そのため口の中をよく観察できるように猫ちゃんを慣らせておく必要があります。どの腫瘍においてもそうですが、先述したように口腔内扁平上皮癌でも早期発見・早期治療で予後が改善することから、猫が小さい頃からのデンタルケアなどで口を触る習慣を身につけておくことが重要です。また少しでも口を気にする素振りを見せたり、悪臭のあるよだれが出ている場合は一度病院へ来られるのをおすすめします。
T.S.