心臓病は人も犬も猫も多いですが、特に猫の肥大型心筋症の診断には苦慮します。肥大型心筋症とは心臓の筋肉が肥厚することで血液をうまく送り出すだけの容積を心臓内に確保することができずに心不全に陥ってしまう病気です。重症化すると心不全だけでなく血栓症を引き起こします。症状も重症化しないと現れないのですが、聴診で必ずしも雑音が聴取されるわけではなく、レントゲンでも大きさの変化が微妙なものも多く、心エコー検査は有用ではありますがじっと検査できない猫ちゃんもいるためになかなかルーチンに行われないのが実情です。そこでNT-proBNPというバイオマーカー検査が開発されました。
BNPとは脳性ナトリウム利尿ペプチドのことで、利尿作用や血管拡張作用を示すことにより心臓の負担を軽減します。心筋細胞の障害や伸展を感知すると、心臓からはNT-proBNPというバイオマーカー値が上昇することから、血液検査で猫の肥大型心筋症を診断することができます。しかし心筋症があっても心臓に負荷がかかっていない、例えば軽度~中程度のあまり重症ではない心筋症ではNT-proBNPは感度が低いために、その結果を鵜呑みにしてはいけません。やはり診断を深めていくためには聴診、心電図、レントゲン、心エコー検査など従来の検査を組み合わせて診断していく必要があります。しかし血液検査でも心筋症が診断できるツールがあるというのは心強いものです。
心臓病にかかわらず猫ちゃんはなかなか病気のシグナルを出さないために、やはり早期発見のためには健康診断が重要といえます。まずはワクチンの際に聴診や血液検査、そして心臓病が心配な猫ちゃんにはレントゲンや心エコー検査、そして疑わしい症例にはこのNT-proBNP検査を併せて検査できればと思います。気になる方は診察にいらしてください。
T.S.