南が丘動物通信

右房における先天性疾患 19年01月20日

 右房の先天性疾患には、右房性三心房心があり、後天性のものとしては血管肉腫などの悪性腫瘍が右心耳から心房にかけて認められることが知られています。このうち先天性疾患の右房性三心房心は、静脈洞弁遺残によって心房内に異常な隔壁ができてしまう事により心房が2つの部屋に分かれてしまう疾患です。犬での報告があり、猫や人では報告は見られません。ただし、左房性の三心房心となると逆に犬では報告がなく、猫や人で見られることがあるようです。

 病態としては、右房の一部分が狭くなり、体から帰ってくる血流の入りが悪くなることによって後大静脈圧と肝血圧の亢進が起こり、臨床症状としては腹水が認められます。また併発することがある疾患として、後大静脈・奇静脈連続奇形や左前大静脈遺残といったほかの先天性疾患が見られたり、肝血圧の上昇から肝腫大が認められます。通常雑音はや頚静脈拡張は認められず、レントゲン上では右心不全を起こすような肺高血圧症、右心腫瘤による右心不全や三尖弁異形成などとの鑑別が求められますが、エコーで明らかに心臓の部屋が増えていることが見えるため、心臓のエコーを実地することにより確定診断が容易な症例です。

 症状は必ずしも若齢で出てくるわけではなく、6歳を超えてから出てくる報告もあることから、腹水がみられた患者さんが来院された際に可能性として考えておくものの1つです。症例としては多いものではなくむしろまれものではありますが、こういうものもある。ということを心にとどめておきたいと思います。

S.A