南が丘動物通信

減感作療法 18年01月07日

犬のアトピー性皮膚炎は遺伝的要因がかかわる疾患で、痒みのコントロールと生涯むきあっていかなければなりません。アトピー性皮膚炎に対する治療は内服薬や外用薬を用いた薬物療法が一般的です。近年はプレドニゾロン(ステロイド)だけに頼るのではなく、シクロスポリンやオクラシチニブのような薬剤の併用による著効例もメジャーになってきていますが、長期的に(あるいは生涯)投薬が必要となるケースも少なくありません。

減感作療法は、アトピー性皮膚炎をはじめとしたアレルギー疾患における唯一の原因特異的療法とされています。つまり、薬物療法などの対症療法による痒みの一時的な改善ではなく、長期的な作用や予防効果が期待できる治療法です。アレルギーの原因となるアレルゲンエキスを少量から段階的に増量して接種・投与することで、体に慣れさせていき(脱感作)、症状の改善を誘導します。接種・投与するアレルゲンにはいくつか種類がありますが、近年動物用医薬品として登場したアレルミューン®HDM(日本全薬工業)もその1つで、コナヒョウヒダニの蛋白質であるDerf2のリコンビナント蛋白にプルランを結合させたものとなっています。投与アレルゲンの決定には、事前にアレルギー検査(IgE検査)が必要となります。

減感作療法の効果の発現には約6か月はかかるといわれており、また過去の報告では症状改善の有効率は約50~70%と全例で有効とはいえませんが、奏功すれば薬物療法の減薬や休薬も期待できる唯一の治療法です。

痒みでお悩みのわんちゃん全てに減感作療法が適用されるわけではありません。痒みの原因がアトピー性皮膚炎なのか、他の疾患なのかどうかで当然ですが治療法は全く異なります。原因疾患の特定は治療への第一歩として非常に重要です。当院では、犬のアトピー性皮膚炎の治療の選択肢の1つとして減感作療法を実施しております。愛犬の皮膚の痒みでお悩みの飼い主様、減感作療法に興味のある飼い主様は獣医師までご相談ください。

H.B.