南が丘動物通信

猫の慢性腎不全の新しい薬「ラプロス」 17年10月29日

 2017年春に猫の慢性腎不全に対する新薬として、ラプロスという薬が発売されました。腎不全に対する内服薬は数多くありますが、そのほとんどが腎不全によって生じた症状に対しての対症療法的なものでしたが、ラプロスは初めて腎機能低下の抑制で認可を取ったとして話題になっています。

 主成分のベラプロストナトリウムは人医療では以前から使用されています。プロスタグランジンという生理活性物質で、血管拡張や血小板凝集抑制などの作用を示すことから、人では肺高血圧症や動脈閉塞症などで用いられてきました。腎不全に対しても良好な報告もあったため、慢性腎不全の多い猫においても研究が進められ販売するに至りました。

 上に述べた血管拡張作用、血小板凝集抑制作用だけでなく、腎臓の線維化の抑制、炎症性サイトカインの抑制などの複数の効果により高血圧の是正や糸球体の保護、腎血流を維持することで腎機能の低下を防ぐ、または機能を維持してくれます。人と違い、人工透析による慢性腎不全の管理は現実的でないことから、いかに今ある腎臓機能を守っていくかということが大事になります。

 またラプロス錠を投与することで食欲不振も回復し、活動性も上がるのも報告されています。腎不全の猫において体重を維持することはとても重要なので、生活の質を改善させる効果はとても意味があります。錠剤自体もとても小さく、飲ませやすいというのもメリットです。

 腎不全に罹患する猫はとても多く、今回ご紹介したラプロスを含めた多くの管理が必要になります。これさえ与えればすべて大丈夫というものでもなく、まずは病気の理解も求めれるため、説明・納得の上でその子に合った治療法を飼い主さんと見つけられたらと考えています。

T.S.