南が丘動物通信

ハリネズミの疥癬 17年09月17日

ハリネズミ(ヨツユビハリネズミ)はその独特な外見から一般によく知られている動物で、近年、愛玩動物としての人気が高まっており、飼育頭数が増加してきております。

ダニの感染はハリネズミでは非常に一般的な疾患であり、飼育下のハリネズミに発生する皮膚疾患全体の66.04%を占めていたという報告もあります。イエダニやショウセンコウヒゼンダニ、ニキビダニなどの感染の報告もありますが、最も多いのはCaparinia. Tripilisというヒゼンダニの一種です。

ダニの感染は購入直後の幼若な個体から、1歳程度の若齢個体で問題となることが多く、一方で比較的成長したハリネズミやダニの寄生数が少ない場合には顕著な症状を示さないこともあります。症状は背中の針の間に鱗屑がみられ、後ろ足で頻繁に掻く仕草がみられることが多いです。重度寄生の症例では脱針や皮膚の発赤がみられることもあります。

鱗屑の採取や皮膚搔爬検査で得たサンプルの鏡検でダニの虫体や虫卵を確認することで診断します。鱗屑や脱針が少なく鏡検での診断が確定できないものの痒みが認められる症例では、駆虫薬の試験的投与を行うこともあります。

治療はセラメクチンなどの駆虫薬を使用します。ほとんどの症例で効果が確認されますが、駆虫薬の投与は3〜4回繰り返し投与が必要となることも多いです。同時に、床材や巣箱などは治療中はできる限り頻繁に交換し、ケージ内の衛生環境の改善させます。ダニの寄生に真菌感染が併発している症例も多く、真菌培養などで感染の有無を確認し、抗真菌薬の投与が必要となる場合もあります。

H.B.