リンパ球形質細胞性鼻炎は、犬や猫において最も多い慢性非感染性鼻炎で、ヒトでは特定の季節の花粉や真菌、動物の鱗屑や羽毛、ハウスダストマイトなどを吸引することにより誘発されるとされていますが、犬や猫においては明確な原因は不明です。現在のところ、ヒトと同様アレルゲンや刺激物質の吸引も一因と考えられていますが、免疫介在性の可能性が示唆されています。
本疾患は、リンパ球や形質細胞などのリンパ系炎症細胞が鼻腔粘膜を刺激し、漿液性~粘液性の鼻汁が分泌されます。これらリンパ系炎症細胞の浸潤が鼻腔粘膜の防御機構を崩壊させ、細菌が増殖し最終的に粘性の膿性鼻汁が分泌されるようになってしまいます。ミニチュア・ダックスフンドやウィペットで好発し、中齢での発症が最も多いと考えられています。
確定診断には、CT、MRI、内視鏡などの画像検査により他の鼻腔疾患との鑑別を行い、鼻腔内の粘膜組織を採取し、病理組織学検査をすることが必要です。
治療は、グルココルチコイドを中心とした免疫抑制療法を行い、二次感染が起こっている場合には抗菌薬の投与なども行います。ネブライザー療法も症状の軽減には有効であることがあります。しかし、こういった治療を行っても、根治は難しく、治療途中での中断は再燃する可能性が高い疾患です。残念ながら現在のところ本疾患を予防する方法は分かっていませんが、本疾患は粘稠性鼻汁による誤嚥性肺炎を起こすことがない限り、死に至ることはないため、バランスを取りながら上手く付き合っていくことが必要です。
T.H.