南が丘動物通信

熱中症 17年04月02日

依然朝晩は肌寒い日がありますが、日中は大分暑い日も多くなってきました。今からの季節、気をつけないといけなくなるのは熱中症です。

熱中症は、高温多湿環境下による高体温や脱水によって引き起こされる全身性の疾患です。動物の熱中症は、①高温多湿環境下への長時間の暴露、②熱放散能の低下、③過度の運動、などが原因となります。特に②の熱放散能の低下の原因としては、短頭種、肥満、大型犬などの身体的特徴や、心疾患、呼吸器疾患などの病的状態などがあります。

熱中症の症状は、粘膜のうっ血および充血、頻脈、パンティングなどがあり、より重篤化すると虚脱、運動失調、嘔吐、下痢、流涎、振戦、意識消失、発作などが認められるようになります。

診断は、臨床症状と直腸温が40.5℃以上であれば確定的ですが、各臓器の障害程度の把握のために血液検査を実施します。多臓器不全に陥っている場合や、播種性血管内凝固(DIC)を引き起こしている場合には、適切な治療を行っても死亡率は高いです。

治療は、まずは身体を冷やすことが基本になります。一番簡単で効果的な方法は、常温の水道水で濡らして扇風機で送風し、気化熱を利用して冷却する方法です。冷水や氷、アイスパックなどを用いて急速に冷却すると、体表の血管が収縮し、温度の高い血液が体の内部の各臓器へ循環して、熱が体表から放散されにくくなります。その結果、深部体温が低下せず、高体温による各臓器への障害が促進され、逆効果となってしまいます。よって、熱中症を疑う場合は、まずは体温を測定してもらい。40.5℃以下で意識がはっきりしている場合には、風通しの良い場所や冷房の効いた場所に移して水を十分に飲ませて頂きます。体温が40.5℃以上や意識レベルが低下している場合には、水道水で体全体を濡らすか、水で濡らしたタオルで全身をつつみ、扇風機などで風を当てて冷却してもらい、病院に移動する最中も、車内の冷房や車の窓からの風を利用して冷却してもらうと良いです。

熱中症が原因で動物病院を緊急で受診する犬の死亡率は50%で、死亡例の多くは受診後24時間以内に亡くなってしまいます。熱中症を起こした動物を救命するためには、より早期から冷却処置を行い正常体温に回復させ、各臓器へのダメージを最小限に留めることが重要です。しかしながら、前述の通り、重症例は適切な治療を行っても救命できないことがあります。近年、地球温暖化の影響で平均気温が上昇しており、夜間での熱中症の報告例もあります。段々と暑くなっていく今からの季節、愛犬たちの温度管理には十分に注意してください。

T.H.