よく子犬を新たに家族に迎え入れた飼い主さんから、避妊や去勢手術をすると太るから心配だという声をよく聞きます。きっとお友達のワンちゃんが手術をしたあとに太ったというのを聞いたことがあるのだと思います。それには根拠があるのでしょうか?
確かに避妊・去勢手術を行った犬猫では、されていない犬猫に比べて約2倍体重過剰になりやすいというデータがあります。これはいくつかの理由があり、ひとつは手術を行ったとき、していないときと比べて20~25%安静時代謝率が低下するといわれています。つまり性ホルモンが減少することで代謝が落ち、体重を維持するための必要カロリーが75~80%程度しか必要としなくなるということです。またエストロゲンは食欲を抑制させる働きがあるそうなので、避妊手術によりエストロゲンが減少すると食欲が増加することとなります。つまり食欲が増加するのにも関わらず代謝が落ちて太りやすくなるのです。
いくつかの研究によると年齢とともに体重過剰の動物が増加することが知られています。2歳以下ではごく少数しか体重過剰の個体はいませんが、2歳を過ぎると増加し、6~8歳あたりで最も多くなるといわれています。つまり人間と同じで中年にさしかかると肥満が増加します。このタイミングで避妊・去勢手術を行うとさらに体重増加に拍車がかかります。病気を予防するために避妊・去勢手術を行ったのに、そのあとに太ってメタボな病気になってしまったら元も子もありませんね。
しかし上記のことも、若いうちに手術を行うとホルモンの作用は大きくありませんから、その影響は最小限となります。実際に生後6カ月~1歳くらいで避妊・去勢手術を行っても太る子はほぼいないと感じています。つまり若い子が手術をしても適切な食事を与えていれば肥満になることはほぼないので、心配はありません。
当院ではもちろん中年齢以降における避妊・去勢手術を行った際には体重コントロールのお話も同時にさせていただいております。最近は肥満の子も多く肥満も病気とされています。ダイエット計画のお手伝いもさせていただきますので、ぜひご相談ください。
T.S.