南が丘動物通信

3月29日 葉月会遺伝病学セミナー  16年03月30日

犬における遺伝病を考える

日本大学生物資源科学部教授 津曲茂久先生


人と同様に動物でも多因子病(遺伝子因子と環境因子が原因で発生)は多くあります。犬の代表的な多因子病としては、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼のような整形疾患や、動脈管開存症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患などが挙げられます。一方、人と異なり動物では単一遺伝病である常染色体劣性遺伝病も多々あり、単一遺伝病であるがゆえにDNA検査によりアフェクテッド、キャリアー、ノーマルの診断が可能となります。犬の代表的な常染色体劣性遺伝病の中には、進行性網膜萎縮症(ミニチュア・ダックスフンドで多い)や潜在精巣、フォン・ウィルブランド病などが含まれ、私たちが日常の診療で目にする疾患も少なくありません。

遺伝病遺伝子検査を行うメリットとして、疑わしい疾患の確定診断が可能な点、繁殖・発症前の診断法となりうる点、遺伝病キャリアーの診断が可能な点が挙げられます。今回の講義で、遺伝病への理解を深めるとともに、遺伝子検査の普及の重要性を感じました。

H.B.